ロンドン五輪EXPRESSBACK NUMBER
静かに開幕を迎えたロンドンの街。
思いを馳せるは1948年大会の無念。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byNaoya Sanuki/JMPA
posted2012/07/28 16:30
次々と人が詰めかけていた、開会式直前のタワーブリッジ。タワーブリッジでも開会式と同時に多くのアトラクションが開催されていた。
27日。ロンドン五輪は静かに開幕しようとしていた。
午前中にときおり降っていた雨は上がった。前日までとは打って変わって、半袖では肌寒いくらいの気温だ。
昼過ぎ、テムズ川をボートで運ばれてきた聖火は、観光スポットのひとつであるタワーブリッジに到着。沿岸には多くの人々が押し寄せた。
夕方になると、開会式が行なわれるメインスタジアムのあるオリンピックパークの最寄り駅からは、チケットを持った人々が次々に降りてくる。
静かだったロンドンが、ようやく変わろうとしている。
開幕を目前にして、海外のトップ選手たちが次々に記者会見に臨んでいることも、間近に大会が迫ったことを実感させる。
中でも、多数のメディアを集めたのが、アメリカの競泳チームの会見である。会場には各国の40台あまりのテレビカメラが並び、集まったメディアは、会場スタッフによると、300人を超えたという。
それも無理はない。
アテネ五輪で6冠、北京では8冠に輝き、歴代1位となる14の金メダルを獲得し、史上最強のスイマーと言われることもあるマイケル・フェルプス。アテネと北京で計3個の金メダルを手にし、昨年の世界選手権では5冠のライアン・ロクテ。競泳の歴史にも名を残すであろう2人の選手の会見だったからだ。
「彼に勝つためだけに泳いでいるわけじゃありません」
しかも、フェルプスは7種目にエントリーし、ロクテは5種目にエントリーしているが、個人メドレーの200mと400mで直接対決となる。昨年の世界選手権の200mはロクテが世界新記録で制し、今年6月の全米五輪代表選考会ではフェルプスが優勝。400mはフェルプスが五輪3冠を狙う種目だが、選考会ではロクテが優勝している。拮抗した両者だからこそ、勝負への行方も予断を許さない。それもまた、大きな関心を呼んでいる理由である。
会見では時間をずらし、先にフェルプスが登場し、ロクテは他のアメリカの代表選手たちと現れた。
2人のコメントは対照的だった。
会見中、終始リラックスし、おどけたしぐさも見せたフェルプスは言う。
「(ロクテとの対決は)きっと興奮してもらえるレースになると思います」
今大会が最後のオリンピックになることも明かした。
一方のロクテ。
「彼に勝つためだけに泳いでいるわけじゃありません」
多少、ナーバスになっているように見受けられたが、おおむね、多数のメディアを前に落ち着いていた。アメリカ国内でも常に比較され、注目を浴び続け、海外でも脚光を浴びる。オリンピックともなればなおさらだ。その中で重圧に押しつぶされずにいられること。それが、この2人にこれだけの活躍を可能にさせてきた要因だろう。
実は、この両者の存在は日本勢にも大きくかかわるのだ。