スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
オールスターとMVP争い。
~MLB後半戦を盛り上げるのは誰だ~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2012/07/14 08:01
2年連続球宴出場を果たしたマッカッチェン。走攻守、強肩、パワー、すべてを備えたファイブツール・プレイヤーだ。
ナ・リーグのMVP争いに割って入る、いぶし銀の穴馬。
同時に、ナ・リーグのMVP争いも渋い線が浮上してきた、と私は見る。
6月までは、デヴィッド・ライトとジョーイ・ヴォット(レッズ)の一騎打ちかと思われていたのだが、ここへ来て、穴馬アンドルー・マッカッチェン(パイレーツ)と実力派ライアン・ブラウン(ブルワーズ)の目が急速に出てきたからだ。
なかでも興味深いのはマッカッチェンだ。176センチ、83キロの華奢な身体つきを見ると、1年を通しての活躍はむずかしそうに見えたのだが、前半戦=3割6分2厘の打率はナ・リーグ首位。波乗りパイレーツの原動力といっても過言ではないだろう。とくにオールスター直前の10試合は、4割8分8厘の打率と本塁打4本の荒稼ぎ。ペドロ・アルバレス(最近10試合で2割9分、3本塁打)やギャレット・ジョーンズ(最近10試合で3割5分1厘、3本塁打)、さらには新鋭ドゥルー・サットン(最近10試合で2割7分5厘、1本塁打)らの活躍も、「マッカッチェン効果」の産物と見てよさそうだ。
一方、2011年のMVPブラウンのほうは、ブルワーズの勝率5割以下という低迷が痛い。もしMVPを獲るとしたら、本塁打(24本/リーグ1位)、打点(61点/リーグ2位)の2冠を奪い、なおかつ打率もリーグ5位以内に食い込んだ場合に限られるだろう。
ア・リーグMVPはハミルトンの失速で風向きが変わる?
そうだ、ア・リーグのMVP争いにも触れておかなければなるまい。シーズン前半はジョシュ・ハミルトン(レンジャーズ)の独走状態だったが、ここへ来てハミルトンがやや失速気味のため、ロビンソン・カノー(ヤンキース)や新人のマイク・トラウト(エンジェルス)にも可能性が生まれてきた。
穴馬としては、トラウトの同僚マーク・トランボと、ホワイトソックスの新鋭左腕クリス・セイル。
わけてもセイルは、若き日のランディ・ジョンソンを彷彿させる投球で、見る者の眼を奪う。ただ、2011年のMVPがヴァーランダーだっただけに、2年連続で投手の受賞となると、実現性が薄いかもしれない。
いずれにせよ、今季はまだまだ見どころが多い。2枚に増えたワイルドカードをめぐる戦いも激しさを増すだろうが、その予測はまた別の機会に。