スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
オールスターとMVP争い。
~MLB後半戦を盛り上げるのは誰だ~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2012/07/14 08:01
2年連続球宴出場を果たしたマッカッチェン。走攻守、強肩、パワー、すべてを備えたファイブツール・プレイヤーだ。
真夏のクラシックは、1回表で勝負がついた。ア・リーグの先発ジャスティン・ヴァーランダー(タイガース)が、試合開始早々、大量5点を献上してしまったからだ。
最終結果は、8対0でナ・リーグの完勝。完封試合は1996年以来(このときもア・リーグの敗戦)で、これだけ点差がついた試合というのは、'83年のア・リーグ圧勝劇(13対3)以来のことだ。
勝利の立役者はジャイアンツの4人組だった。メルキー・カブレラ、バスター・ポージー、パブロ・サンドバル、マット・ケイン。
球宴前、4人はけっこう冷たい眼で見られていた。組織票を動員したジャイアンツが、自軍の選手を無理やり球宴に出場させたという声が高かったからだ。
捕手のポージーは、フィリーズのカルロス・ルイーズより成績が悪かった。三塁手のサンドバルも、メッツのデヴィッド・ライトに比べると明らかに見劣りした。ファン投票で外野部門の1位を獲得したカブレラにしても、ヤンキース時代の彼を知る者から見れば、ずいぶん出世したなという印象がつきまとう。
組織票の批判に反発? ジャイアンツ勢の意地が爆発!
というわけで、3人は分不相応の批判を受けていた。それに対する反発もあったのだろうか。彼らは3人で5打点4得点を挙げた。カブレラなどはナ・リーグ唯一の本塁打を放ち、MVPに輝いた。この3人だけではない。先発のマット・ケインも2回を無得点に抑えた。ナ・リーグ先発はメッツのR・A・ディッキーが有力視されていたのだが、ポージーがナックルボール(ディッキーはこの球を武器に復活した投手だ)を受け慣れていないという理由で、ジャイアンツのケインに白羽の矢が立てられたのである。
そんなこんなで、ジャイアンツにとっては後半戦に向けて弾みがついたといいたいところだろう。序盤こそ、主戦投手ティム・リンスカムの大不調などがあって苦戦を強いられてきたわけだが、もともと地力と勝負勘はナ・リーグ最強だ。開幕前に私が穴印を打ったマーリンズは浮上しそうもないが、ジャイアンツとナショナルズの2強に、パイレーツ(予想外だった)、レッズ、メッツ、ドジャースあたりが絡んでくると、ナ・リーグのプレーオフはかなり面白くなるのではないか。