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ミランで安住せず汗まみれの現役を!
ガットゥーゾ、ネスタらの新たな挑戦。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2012/07/27 10:31
5月13日に行なわれた最終節ノバーラ戦の終了後、ファンに感謝の意を示すガットゥーゾ。「自分が出て行って、ほかの選手にスペースを譲るときがきた」と退団の理由を語っていた。
ネスタは、MLSの将来に大きな期待をかけ北米大陸へ。
「ずっとMLSには興味があった。これまでの現役生活で十分稼いできたから、年俸の問題じゃない。ここにはイタリアとちがうサッカー観がある」
元々バカンスやリハビリでアメリカ渡航歴も豊富なDFネスタは、北米大陸に渡った。元ボローニャのFWディバイオとともにモントリオール・インパクトに加入した彼には、激しい肉弾戦が好まれるアメリカ流のリーグ戦が待ち構えている。長いキャリアの中で肩や背中に古傷を抱えるネスタにとっては、タフな新シーズンになるのは間違いない。
だが、硬軟自在のテクニックと戦術眼に長けた熟練の名センターバックは「自分に必要なのは異国リーグでの経験。数年前にミランの一員として参加した北米ツアーのときと比べても、MLSのレベルは上がっている。ここのサッカーはさらに発展する」と新たな挑戦への期待で胸を膨らます。
5年前の代表引退を早まったと後悔はしていない。
ネスタは数年前まで、引退後はサッカー界から距離を置きたい、という考えを持っていた。しかし「ここまで長く人生の一部だったサッカーから離れることはできない」と考えを改めると、モントリオールへの加入と同時に、将来トップレベルの指導者になるという明確な目標を掲げた。
ブッフォンやピルロらかつての戦友たちがEUROで見せた活躍に、ネスタはアズーリ時代を懐かしく思い出した。5年前の代表引退を早まったと後悔はしていない。そのおかげで自身のキャリアが3、4年延び、MLSでの貴重な経験につながっていると自覚しているからだ。
「60歳になろうが現役だ」
現役にこだわる自らの気持ちに決着をつけるのは難しい。フィリッポ・インザーギほどのレジェンド・プレーヤーであればなおさらだ。
古巣アタランタやCL予備予選に出場するマラガ(スペイン)からのオファーに心は揺れた。さんざん悩んだ末の7月24日、彼はミラン育成組織の指導者となることを受け入れた。
「目指すは恩師アンチェロッティ(パリSG)」と語ったインザーギには、まだ監督界という新天地の入口に戸惑う表情がありありと浮かぶ。「引退はもうすぐ39歳になる男の論理的な判断さ」と、らしくない言葉を続けたが、本音はちがう。
「“60歳になろうが現役だ”って、俺の心は言ってる」
スパイクを脱いでも、ミランとともに生き続けることを選んだインザーギは、ラツィオのU-16部門で監督を務める弟シモーネとの兄弟指導者対決を目標に、新しい冒険を始める。