MLB東奔西走BACK NUMBER
現役唯一のナックル投手が初球宴!
R.A.ディッキーが見せる正統なる魔球。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2012/07/07 08:02
現役メジャー投手で唯一のナックルボーラーであるR.A.ディッキー。今シーズン、前半戦ですでに自己最多となる12勝を挙げ、防御率2.15、奪三振116(7月4日現在)と、37歳にして大ブレイクしている。
歴代ナックルボーラーを上回る、今シーズンの成績。
ディッキーのここまでの成績は、6月は2試合連続で1安打完投勝利(1試合は完封で、もう1試合は1失点ながら自責点無し)を達成するなど、月間最優秀投手賞を獲得。さらに5月22日から6月18日まで44.2イニング連続自責点ゼロという離れ業もやってのけた。7月3日現在で投手部門三冠といわれる勝利数(12勝・1位)、防御率(2.15・3位)、奪三振数(116・2位)とすべてトップ3にランクイン。現時点でオールスター戦の先発投手はおろか、サイヤング賞の最右翼でもあるのだ。
サイヤング賞といえば1956年に誕生以来、絶対的な投手に贈られてきたエースの称号で、まだ誰一人としてナックルボーラーが受賞したことはない。
ナックルといえば、それを投げる投手でも制御不能といわれる球種で、制球も難しく安定感とは正反対のイメージがつきまとう。しかし、今シーズンのディッキーは明らかにナックルボーラーとしては“規格外”なのだ。以下の表をご覧頂きたい。
選手名 | 通算防御率 | 通算平均 奪三振数 |
通算平均 与四球数 |
自己最多イニング数 達成年(年齢) |
---|---|---|---|---|
フィル・ニークロ | 3.35 | 5.6 | 3 | 1979(40) |
ジョー・ニークロ | 3.59 | 4.4 | 3.2 | 1982(37) |
チャーリー・ハウ | 3.75 | 5.6 | 3.9 | 1987(39) |
トム・キャンディオッティ | 3.73 | 5.7 | 2.9 | 1986(28) |
ティム・ウェイクフィールド | 4.41 | 6 | 3.4 | 2005(38) |
R.A.ディッキー(~2011シーズンまで) | 4.07 | 6 | 2.9 | - |
R.A.ディッキー(2012シーズン) | 2.15 | 9.2 | 2 | - |
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1980年代以降メジャーで活躍した代表的なナックルボーラーの通算防御率、1試合あたりの平均奪三振数、平均与四球数、自己最多イニング数達成年および年齢を表にまとめたものだ。
昨年までのディッキーは他のナックルボーラーと同じような成績だったのに対し、今年に入ってからは、明らかに安定感が増しているのが数字の上でも明らかだ。