野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
交流戦開幕! “ライバル宣言”に見る
選手間のオモシロ人間関係図。
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2010/05/12 12:45
実に味わい深い……工藤公康のライバル宣言。
また、ベテラン選手になっていくと、同年代の選手を「ライバル」でなく、同志として指名する傾向があるのも興味深い。
今月5日に47歳を迎えた西武の工藤公康を見てみよう。
巨人・高橋由伸へ 「1年でも長く野球やれ」
中日・堂上兄弟へ 「早く一人前になれ」
ヤクルト・宮本慎也へ 「とにかく長く野球をして、宮本君の技術を後輩に伝えてほしい」
阪神・金本知憲へ 「1年でも長く! 頑張れ! 40オーバー!」
広島・嶋重宣へ 「1年でも長く、この世界で頑張れ!」
横浜・佐伯貴弘へ 「お前には絶対打たせない」
球界最年長として各チームのベテランたち、高校の後輩にエールを送る様は実にあたたかく、人間味に溢れた内容ではないか。佐伯とは何があったかしらないが。
横浜・内川へのライバル意識は、むしろ嫁に向けてだった。
また、故障によりここ2年半登板機会のないソフトバンク・斉藤和巳に対して、巨人・小笠原、阪神・桧山、葛城、ヤクルト・飯原などから、復活のエールともとれるライバル宣言が見られた。こういう扇情的な宣言は、実にいい。日本的な野球の魅力ともいえよう。
その一方で、「日本シリーズで手に当てられたから」と日ハム・高橋信二を指名した巨人・東野のように、「めちゃくちゃに打たれた」「手も足も出なかった」など、個人的な因縁で指名をする選手も多い。
とはいえ、横浜・内川聖一に対してのライバル宣言は、本人にとって心外だろう。
「アナウンサーゲットしたので」 (西武・藤田太陽)
「アナウンサーの嫁をもらうので」 (楽天・渡邉恒樹)
「嫁がフジテレビだから」 (楽天・福盛和男)
同じフジ女子アナを嫁に持つ福盛はさておき、プロ野球選手とて人間、嫉妬もする。さらにはこんな選手も。
「ルックスがいいから」 (オリックス・甲斐拓哉 → 阪神・大和)
「イケメンだから」 (阪神・関本賢太郎 → ロッテ・小林宏)
僕はそんな彼らがたまらなく好きだ。
ソフトバンク・三瀬の宣言をなぜ毎年気にしているか?
そんなライバル宣言だが、毎年気になっていた選手がいる。ソフトバンク三瀬幸司だ。
三瀬は'04年のルーキー時に絶対的な守護神として活躍したものの、'05年の交流戦を境に絶不調へ陥ったと言われている。その遠因は連続フルイニング出場を続けていた阪神・金本への頭部死球を当てたことではないかとの噂がある。
'06年以降の三瀬にはその噂を裏付けるようなライバル宣言が見て取れた。毎年金本を指名していた宣言は以下の通りである。
2006年 「昨年デッドボールを当ててしまったから」
メッセージ「昨年はすみませんでした。正々堂々勝負しましょう」
2007年 「一昨年デッドボールを当ててしまい、もう一度真っ向勝負をしたいから」
メッセージ「一昨年はデッドボールすいませんでした」
2008年 「3年前にデッドボールを当ててそれ以来対戦していないから」
2009年 「尊敬できる選手だから」
これらのコメントを毎年見る度に、複雑な心境になっていた。もうダメなんじゃないかと思うこともあった。しかし、今年は違う。2010年、三瀬のライバル宣言は大きく変ったのだ!
阪神・城島へ 「元チームメイトで自主トレも一緒に頑張ってきたから」
メッセージ 「外真っ直ぐから入るわ」
昨年までの低姿勢から一転、球種予告までする力強いライバル宣言。ついにふっ切れたのかどうかはわからないが、精神面の弱さが指摘されていただけに、復活の予感をヒシヒシと感じるではないか! 頑張れ、三瀬!