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圧倒的な“父”ディープインパクト。
2歳戦線、新種牡馬の台頭はあるか?
text by
片山良三Ryozo Katayama
photograph bySeiji Sakaguchi
posted2012/06/16 08:01
14戦12勝という輝かしい成績と数々の思い出を残し、2006年12月の有馬記念を最後に現役を引退。2007年から北海道、社台スタリオンステーションで種牡馬生活を送っているディープインパクト。今も、競走馬時代同様、圧倒的な存在感を示している。
サラブレッドの生産界における種牡馬ディープインパクトの存在の大きさは、いまや競走馬時代のそれを凌駕する、眩し過ぎるほどの輝きを放っている。
オールマイティーで、しかもハイレベルな活躍馬を送り続けるキングカメハメハがこれまでのチャンピオン。そんな強い横綱を、並んで踏ん張る暇も与えずにかわし去って、今年の上半期のリーディングサイヤーの座に堂々と就位したのがディープインパクトだ。
キングカメハメハのアーニングインデックス(種牡馬の能力を示す指標のひとつで、産駒の収得賞金を種牡馬別に集約して1頭あたりの比率として表している。1が平均値で、数値が大きいほど産駒が賞金をよく稼いできたということになる。数字は6月5日現在、サラブレット全馬・総合)は、2.57と相変わらずの高さをキープしているというのに、ディープインパクトのそれは5.20という規格外の数値なのだからたまらない(産駒数が少ないと、時折飛び抜けた数値が出ることはある。例えば、春の天皇賞馬ビートブラックを輩出したミスキャストは驚異の10.88。産駒の出走馬はわずか6頭しかいないが、収得賞金を1頭で全部稼ぎだしてこんな数値が出た!)
人気種牡馬ともなると産駒数は爆発的に増え、その中には全くの期待外れに終わる馬も少なからずいるわけで、それらがよく稼いだ馬たちの数字を食ってしまうことになるのだが、このスーパー種牡馬はそうした常識さえも持ち前の爆発力で吹っ飛ばしてしまっている。
強すぎるあまり、棲み分けを強制される種牡馬ディープインパクト。
来年度の種付け料は今年の5割増の1500万円に設定されるというもっぱらの噂だが、そうでもしないと他の種牡馬たちとの差別化ができないという事情も大いに理解できる。
種付け料400万~500万円でも十分に優秀なクラス(例えば、ハーツクライや、マンハッタンカフェ、ネオユニヴァース、ゼンノロブロイあたり)なわけだが、突き抜けた実績を示したディープインパクトにその近辺の値段設定でウロウロされたら、それだけで不当に高額という印象を与えかねない。
つまり、「あんたは強過ぎるから」と、棲み分けを強制されてしまっているのが、種牡馬ディープインパクトの実情なのだ。