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仙台への切ない想いをふっ切った!
中日・山崎武司が抱く“現役”の矜恃。 

text by

田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byNanae Suzuki

posted2012/05/29 10:31

仙台への切ない想いをふっ切った!中日・山崎武司が抱く“現役”の矜恃。<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

今季ここまで(5月27日現在)、32試合に出場して打率.256で本塁打はいまだ無しの山崎武司。仙台での対楽天戦では「力が入り過ぎたな」と語っている。

 5月22日。クリネックススタジアム宮城の室内練習場でウォーミングアップを終えた山崎武司は、にこやかな表情を浮かべながらこう言った。

「ワクワクしているかって? どうなんだろう。でもまあ、頑張るから」

 この日は、山崎が中日に移籍してから初めてとなる楽天との「凱旋試合」を控えていた。

「久々に『第二の故郷』の仙台に戻ってきて、たくさんのファンに『おかえり』と声をかけてもらえたことで、改めて『帰ってきたんだな』って思いました。この場所でみんなの前でプレーすることは、今年の大きな目標のひとつだったので大いに力は入るだろうし、緊張や興奮といった様々な感情を抱きながら試合に臨むでしょうね。でも一番は、球場に来てくれた方たちに『僕はまだ、元気にやっていますよ』という姿を見せたい」

グラウンドに降り注いだ雨は男・山崎の嬉し涙か。

 今年の開幕前、山崎は「Kスタの打席に立ったら感激して泣いちゃうかもしれないね」と照れ笑いを浮かべながら心境を吐露した。

「ずっと応援してくれた東北のファンに恩返しをしたいと思っていたけど、それを放り投げて名古屋に戻ってきちゃったわけでしょ。拾ってくれた中日には感謝しているけど、そこだけは正直、しっくりこないかな」

 チームの柱として7年間、慣れ親しんだこの地でプレーする。楽天戦は山崎にとってそれほど思い入れがあるし、グラウンドに立ち、感傷に浸っていたに違いない。

 山崎は涙を見せなかった。

 この日、大粒の雨によってグラウンドがびしょ濡れになっていたその様子は、まるで、彼の感情を投影しているかのようだった。

 楽天の応援席であるレフトスタンドには、「おかえり 山崎武司」のボードが掲げられている。現背番号7番の松井稼頭央がベンチにいないにもかかわらず、数多くの「7」のプレートが嬉しそうに弾んでいる。

 仙台のファンは、昨年まで楽天の7番をつけていた山崎を温かく迎え入れてくれたのだ。その光景は、高木守道監督も「やっぱりすごいんだね、仙台での山崎の人気は」と目を丸くするほどだった。

「ボードは見たよ。本当に嬉しかった」と山崎は言葉を弾ませた。この日は2回裏の途中で降雨ノーゲームとなったが、翌日の試合では第1打席に安打を放ちファンを喜ばせた。次の試合も含めその後は無安打に終わり、「もう1本打ちたかったなぁ」と悔しさを滲ませていたものの、山崎はしっかりと前を向き、こう言葉を繋いだ。

「イーグルスファンがまだ自分を覚えてくれて声援を送ってくれたことに幸せを感じた。これからは、自分本来の力をしっかり出せるように頑張っていかないといけませんな」

【次ページ】 「『まだ俺のなかの火は消せねぇな』って思ったんだよ」

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