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松井秀喜のメジャー昇格は時期尚早!?
選手補強を続けるレイズの本音とは。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byAFLO
posted2012/05/24 10:30
レイズ傘下となる3Aのダーラム・ブルズの試合でプレーしている松井秀喜。5月17日にはレッドソックス傘下の3Aポータケット戦で、調整中の松坂大輔と対決もしている。
そもそも松井獲得時は、レイズも調整期間を考えていた。
松井と契約した当初のレイズは、彼に十分な調整期間を与えるよう考えていたはずである。それはジョー・マドン監督の発言からも窺い知れる。
「チャンピオンを狙う上で選手層を厚くすることは欠かせない。(松井との契約は)今は保険的な意味合いを越えていない」(5月1日)
「我々と松井の双方に時間設定は設けない。焦らず状態が上がったときに彼の気持ちとチーム状況を考慮して(メジャー昇格を)判断する」(5月8日)
多くの故障者と不調の打者を抱え、どうにもならないチーム事情。
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もちろん、準備ができたかどうかを推し量る基準ほど曖昧なものはない。ただ、松井に十分な調整期間を与えずに、メジャーに昇格させようとしているレイズにも、それなりのチーム事情がある。
それは、相次ぐ故障による選手の戦線離脱だ。
5月22日現在で、故障者リスト入りしている野手が6人に達している。しかもそのうち3選手が、チーム内の打率上位5傑に入っている主力選手たちである。
そこに追い打ちをかけるように、現在主軸を任されている選手たちの打撃不振が続いており、まさに安定した打撃を供給できる打者の補強が急務の状況に陥っている。だから、松井の調整をじっくり待てるような余裕がなくなってしまったというわけだ。
だが、松井の早期昇格はチームではなく、実は彼自身にとって、今後の野球人生をさらに追い詰める危険性を孕んでいる。
というのも、松井が念願のメジャー昇格を果たしたとしても、現時点での松井の置かれた立場は前述のマドン監督の言葉にもあるように“保険的な意味合い”が強いということだ。
ましてや、メジャーの公式戦に出場できる選手は、登録選手枠の25人しかいない(ただし9月1日以降はその枠が拡大される)。故障者リストに入っている選手は除外されているので、彼らが復帰すれば、25人の中から、誰かが外れなければならない。いうまでもなく、激しい生存競争の場なのだ。