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「アツいぜ!チケット」返金続出で
考えさせられた“ファンのあり方”。 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byHideki Sugiyama

posted2012/05/14 10:31

「アツいぜ!チケット」返金続出で考えさせられた“ファンのあり方”。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

「最高のプレーをしても『金を返せ』と言われるんじゃ選手のモチベーションが下がるだけだよ」と語った中畑清監督。ただし、この企画のネタでスポーツ新聞の一面を飾るなど、宣伝効果は抜群だったという声も……。

 スポーツ紙の記者になったころ、一番嫌だったのはナイターシーズンの内勤仕事だった。

 ナイターをやっているときに、会社で細かいメモなどの原稿や写真のキャプションを書くのが役割だが、実はもっと大事な仕事が待っていたのである。

 それは巨人が負けたときの苦情電話の処理係だった。

 会社に入った当時は、まだ各部署がダイヤルインではなかった。代表番号(これが新聞には必ず載っているから始末が悪い!)にかかってくる電話を、交換台のお姉さまたちがつないでくれるシステムだった。ナイターで巨人が負けたときにはデスクの脇のいくつかの電話が“苦情専用”となって、試合終了直後からひッきりなしに鳴り響くのである。

「読者からです」

 極めて事務的な交換台のお姉さまの声の次に聞こえてくるのは、それこそ聞くに堪えないような感情的な罵詈雑言と、監督や打たれた投手、チャンスで凡退した打者への不満……。そんなことを延々と30分、1時間と話し続ける「読者」も少なくなかった。

 今ならネットの掲示板に書き込むところだが、当時はそんな鬱憤晴らしの場所もない。そこで直接電話で怒鳴り込んでくるわけだ。

 だが……。

 やられた方はたまったものではない。

 いくら読売系スポーツ紙とはいえ、新聞記事のことならまだしも、巨人の勝敗に責任を持てるわけでもない。ときには感情的になって「アンタ、いい加減にしろよ!」とケンカになったこともあった(もちろんそんなことをすると上司から怒られるのだが……)。

 今ならいわゆるクレーマー問題のようなものだろうが、つくづくそんなときは「お客様(読者)は神様なのか?」と自問自答するわけである。

チケット代の返金希望者は85%、金額にして約47万円。

 横浜DeNAベイスターズがゴールデンウィークの5月1日から6日に実施した「全額返金!? アツいぜ! チケット」が物議をかもした。

 チケットは1枚4000円で1試合につき50席が発売され、チームが敗れた場合は最大全額、勝った場合でも半額の2000円まで、お客さんの満足度で返金できるというシステムだった。

 その結果は以下の通りだ。(2日は雨天中止、 人数は払い戻した合計人数、金額は払い戻し総額)

1日 対ヤクルト ●0対7   50人 19万3000円
3日 対ヤクルト ○3対1   49人 8万3000円
4日 対中日      △3対3   48人 8万6500円
5日 対中日      ○12対1 28人 4万6000円
6日 対中日      ○4対2   38人 6万1500円

 5試合の総売り上げは250枚で計100万円。それに対して、払い戻しは213枚で計47万円に達した。

【次ページ】 大勝した試合の返金要求に「屈辱だ」と中畑監督は立腹。

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