日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
国内組の「3-4-3合宿」で見えた、
ザックが目指す日本代表の理想型。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byAFLO
posted2012/04/28 08:02
6月からはじまるW杯最終予選の3連戦(6月3日vs.オマーン、6月8日vs.ヨルダン、6月12日vs.オーストラリア)に向け、新戦力の発掘に余念がないザッケローニ監督。
中央の数的不利というリスクをいかにして解消すべきか。
全体で連動したプレスをかけられず、そのために初日から確認していた「サイドで挟み込んで奪う→数的優位から攻撃を仕掛ける」という流れもつくれなかった。生命線である「コンパクト」を保てない時間帯に、数的優位をつくられてしまっていた。
「全体が間延びしてしまうと中盤の枚数が足らなくなってしまう。そうなるといろんな局面で数的不利になる」(遠藤)
中盤の中央2枚は数的不利のリスクマネジメントを考えれば押し上げていきづらい。それでもザッケローニはピッチ際から腕を前に振って「押し上げろ」と指示を出していた。背後のケアは最終ラインの中央に任せろということなのだろうが、前に向かうのは勇気がいることではある。
前線と中盤の距離が遠くなってしまうと味方に出すパスにも影響してくる。縦に入れられず、効果的ではない横パス、バックパスが多くなった印象を受けた。またサイドにしてもウイングと中盤の両サイドがワイドに張って縦に並ぶような形になると、やはり窮屈になってしまっていた。
選手個々人の応用力を生かせばシステムは機能する。
しかし、である。
戦術に対する困惑があるなかでも選手たちは何とか突破口を見出そうとしていた。「やらされている」ではなく「自分たちでモノにしていこう」という明確な意思が見られた。
たとえば1本目、中盤の中央でプレーした柏木陽介は試合終盤、前に飛び出していってゴールを挙げている。攻撃の際、距離感を解消するために途中から中村憲剛と縦関係になり、そこが突破口となった。2本目でも遠藤と高橋秀人が時折、縦関係になって一人が攻撃のサポートに回ることでチャンスをつくった。
サイドでも2本目、右ウイングに入った清武弘嗣はサイドに張ってボールが出てこないと判断するや、早いタイミングで中に入ってボールを受けて中盤右サイドの酒井宏樹が走るスペースをつくった。この連係からゴールが生まれると、逆サイドの原口元気も同じように中に入ってボールを受けることで連係して崩す場面が増えていった。
たとえ相手が大学生とはいっても、悪い流れをそのまま引きずることなく、応用力でゴールを重ねたことがザッケローニの表情を硬くさせなかった要因であったように思う。
指揮官の描く攻撃のイメージとは違ったかもしれないが、冒頭のコメントにも記したように彼らのパフォーマンスには納得していた。