MLB東奔西走BACK NUMBER
注目すべきは“YU”だけじゃない!
チェンが見せるNPB仕込みの投球術。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2012/04/30 08:01
4月17日のホワイトソックス戦で初勝利を上げたオリオールズのチェン・ウェイン投手。続く、22日のエンゼルス戦でも6回1/3を投げ5安打1失点と好投し、自身に勝ちはつかなかったがチームの勝利に貢献した。
“ほどほど”程度の注目がチェンにとって最高の環境!?
「キャッチャーの要求通りにほとんど投げられなかったので、自分の投球が通じるかどうかもわからなかったです。とりあえずもっとボールを低めに集めなければいけないし、修正点もたくさんある。次回からもう少し落ち着いて投げたいですけど、次もどうなるかわからないですからね」
デビュー戦翌日に、流暢な日本語で自分の心境を正直に話してくれたチェン。その屈託のない笑顔から、十分に彼の純朴さが窺えた。
オリンピックや日本シリーズなど数々の大舞台を経験してきているとはいえ、仮にもしダルビッシュのようなメディアやファンによる衆人環視の状態に置かれたとしたら、間違いなくプレッシャーや緊張と戦い続けなければならず、今のような状態に持っていくのは難しかっただろう。
そう考えると、現在のような“ほどほど”程度の注目がチェンにとって最高の環境になっているといえる。
しかも、首脳陣もチェンに対し過度の期待をかけることがなく、少しずつ経験を積ませるように、起用法も最善の注意を払っている。
決して強豪ではないオリオールズで、勝ち星を積み上げる難しさ。
開幕から先発5番手に回したのも(キャンプ中は開幕戦に合わせた登板間隔でオープン戦に投げていたため、地元メディアも開幕戦の有力候補と報じたほどだった)、他の試合を見せてメジャーの雰囲気に慣れさせるとともに、中4日登板に慣れていないチェンに、オフを利用して登板間隔に余裕を持たせたいという思いやりからだった。
もちろん今後、チェンが好投を続けていけば、地元メディアやファンの関心も増していくだろう。
だがその一方で、傍目からはチェンの投球にダルビッシュのようなスター性は感じ取れないだけに、ボルティモアでチェン旋風が巻き起こるとは考えにくい。
しかも、決して強豪チームではないオリオールズでは、安定した得点サポートを受けるのが難しく、勝ち星を積み上げていくのは容易なことではない。