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プレミアリーグ版“マネーボール”?
清貧クラブのニューカッスルが躍進。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2012/04/12 10:31

プレミアリーグ版“マネーボール”?清貧クラブのニューカッスルが躍進。<Number Web> photograph by AFLO

ニューカッスル今季最大のサプライズ、ハテム・ベンアルファ。昨年までの波のあるパフォーマンスから一転、ハイレベルなプレーを見せ続けている。

格安で獲得したFWの「ダブル・デンバ」が得点を量産。

 3センターハーフの一角を務めるヨアン・カバイエは、チームの新たな頭脳だ。

 昨夏に加入したフランス代表MFは、ロングボールを厭わないニューカッスルのサッカーに懐疑的だったが、「ポゼッションを重視するスタイル確立のキーマンに」というパーデューの言葉で、移籍を決意したと明かしている。ティオテが力強くボールを奪い、カバイエが巧みにパスを捌く中盤では、リバプールの象徴スティーブン・ジェラードも影が薄かった。

 3トップは、指揮官の鑑識眼の賜物だ。「ダブル・デンバ」こと、デンバ・バとパピス・デンバ・シセは、プレミアにおける今季最大の掘り出し物。前者は移籍金なし、後者は900万ポンド(約12億円)と、獲得費用はリバプールがキャロル獲得に払った移籍金の3分の1以下でしかない。それでいて、空陸両用のセネガル人FWコンビは、昨夏に加入したバが、リーグ戦29試合で16得点、シセは今冬の移籍から9試合10得点と、ハイペースでゴールを重ねている。リバプール戦で2ゴールを決めたシセの活躍と笑顔は、古巣との対戦で屈辱の途中交代を命じられたキャロルの不振と監督への悪態とは好対照だった。

リバプールの5分の1の予算で“マネーボール”を実現。

 極めつけは、シセへの2アシストを演じたハテム・ベンアルファだ。フランス人ウィンガーは、2名のマークをかわしてからの完璧なクロスで先制点を呼び、ボックス内でバと絡んで2点目をお膳立てしている。骨折による1年弱のブランクから昨秋復帰した25歳は、前週のWBA戦(3-1)でも1ゴール2アシストと絶好調だ。以前は個人プレーが指摘されたが、ベンアルファの離脱中に監督となったパーデューは、サブとしての起用を繰り返しながら、フィットネスと同等に不足していた戦術理解力を身につけさせている。

 ベンアルファに関しては、抜け目のない経営陣も評価されて然るべきだ。

 ニューカッスルは、マンUが興味を示すほどの才能を持ちながらも、問題児としてマルセイユが売却したがっていたチャンスメイカーを、まずはレンタルで獲得。続いて、大怪我で商品価値が目減りしていた間に買取り交渉を進め、わずか200万ポンド(約2.6億円)で手に入れているのだ。クラブが、ベンアルファ、ティオテ、カバイエ、バ、シセの獲得に要した費用は合計1930万ポンド(約25億円)。これは、リバプールが昨年中の補強に費やした移籍金の5分の1以下でしかない。リバプールの米国人オーナーは、野球界で成功した“マネーボール”のコンセプトの信望者として知られる。そのモットーは、「過小評価されている選手に本来の価値を見出す」こと。ニューカッスルは、この点でもリバプールを凌いでいると言える。

【次ページ】 主力選手の引き抜きを防ぐには欧州参戦が必須条件!?

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