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誰の執念が一番凄かったのか?
マラソン女子五輪代表、最後の暗闘。 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byHiroyuki Nakamura

posted2012/03/15 10:30

誰の執念が一番凄かったのか?マラソン女子五輪代表、最後の暗闘。<Number Web> photograph by Hiroyuki Nakamura

35km付近でロシアのマヨロワが後方から追い上げ先頭におどり出るも、「日本人トップを意識していた」という尾崎好美。中里麗美との競り合いが続くなか、残り700mでラストスパートをしかけ、見事2位でフィニッシュした。翌12日の五輪代表選考会では、この結果が評価され重友梨佐、木崎良子に次ぐ3人目の代表選手に選ばれた。

昨年11月には自らがゴール手前で抜かれていた尾崎。

 中里との競り合いを尋ねられると、こう答えた。

「ラストになれば絶対勝てると思っていたので、絶対いけると思えるところまでためて後ろにつきました」

 本人も自ら語るように、オリンピックへの思いとともに、集団の中に位置し、むやみにペースを上げ下げすることなく走る冷静さがあったところが、今回の好成績につながった。

 また、尾崎は昨年11月の横浜国際女子マラソンでは、優勝した木崎良子にゴール手前でかわされ、敗れている。一度選考レースで失敗したことへの雪辱をこめての名古屋だった。だからこそ、執念も強かった。

「日本人の1位になって、オリンピックに出場したいという気持ちを示したつもりなので、そこを評価してもらえればと思います」

 と、尾崎は喜んだ。

世界選手権5位で五輪を手中にしかけていた赤羽だが……。

 喜ぶ選手がいれば、悔しさにくれる選手たちがいる。

 世界選手権5位の実績を持つ赤羽は、その後の選考大会に出場しないで代表選考を待つ手もあった。だが、1月の大阪国際女子マラソンで重友梨佐が2時間23分23秒の好タイムで優勝して代表入りが有力となったことに危機感を抱き、名古屋への出場を決めた。2月に左足首を痛め、思うような練習を積むことができなかったという。

 結果は2時間26分8秒で8位。

「悔しいです。出場を選んだことに後悔はないとは、はっきりとは言えません」

 と、微妙な言い方をしたのは、万全ではない中での出場だったことがあるかもしれない。

 それでも、先頭に立ってみせた。マラソンでオリンピックに出たいという気持ちの表れだった。

一度は脱落した野口みずきが見せた、驚異的な粘り。

 そして野口もまた、執念を感じさせる走りを見せた。

 たび重なる故障から、4年2カ月ぶりに出場を予定していた1月の大阪国際女子マラソンを左太もも裏の炎症で回避。名古屋にスライドすることを決めると、中国・昆明で高地トレーニングを積み、レースに備えてきた。

「ここまでは本当に長くて、何度も何度もあきらめかけました。今はわくわく感と不安がありますが、オリンピックの喜び、あの瞬間をもう一度味わいたいです」

 大会を前にこう語っていた野口は、17km過ぎに遅れ始め、先頭集団との距離が150m以上となる。追いつくのは困難に思える状況だ。だがそこから追いつき、29kmでは先頭に立ってみせた。野口のその驚異的な粘りにも、オリンピックへの執念があった。

 その後、ペースが上がるとついていくことができずに、2時間25分33秒で6位。

【次ページ】 選考4大会中、3大会も出場した尾崎の執念。

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