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頓挫したビラスボアスの「3年計画」。
迷走するチェルシーはどこへ行く? 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2012/03/15 10:30

頓挫したビラスボアスの「3年計画」。迷走するチェルシーはどこへ行く?<Number Web> photograph by AFLO

解雇されたビラスボアス(左)と、暫定監督のディマッテオ。長期的展望のない監督交代劇が続けば、クラブの先行きは暗いものにならざるを得ないだろう。

 チェルシーは、やはりチェルシーだった。

 3月4日のアンドレ・ビラスボアス解任は、過去8年間で7度目の監督交代を意味している。ロマン・アブラモビッチによる2003年の買収以来、オーナーに長期展望が乏しい事実は、ファンの間で不安視され、メディアで批判され続けてきた。

 ビラスボアスは、タイトル獲得という従来の目標の他に、チームのスタイル変更と世代交代を敢行する任務も課された新監督だった。加えて、今季のプレミアリーグ最年少監督という若さだった。時間の必要性は誰の目にも明白。しかし、肝心のチェルシー経営陣だけは例外だ。前日のウェストブロムウィッチ戦(0-1)で、今季プレミアリーグ7敗目を喫した指揮官は、志半ばどころか、「3年計画」のチーム改変に着手して8カ月という早期に解雇を告げられた。

 しかも、この極めて短い就任期間でさえ、堪え性のないオーナーにすれば辛抱した結果なのだから、チェルシーの短期主義は深刻だ。

「過去最悪」の記録を更新したビラスボアスの屈辱。

 過渡期というチーム事情を無視して結果だけを眺めれば、ビラスボアスが残した数字は「過去最悪」のオンパレードと言わざるを得ない。勝率48%と平均得点数1.7は、アブラモビッチの下で指揮を執った7名の中で最低。逆に、平均失点数1.1は7名中で最高だ。3代前のルイス・フェリペ・スコラーリが、ワールドカップ優勝監督の肩書きを持ちながらも、就任7カ月で職を追われているのだから、ヨーロッパリーグ優勝止まりのビラスボアスは、就任から半年後の昨年末、格下相手の連戦で1分け1敗に終わり、5位で年を越した時点で解雇されていても不思議ではなかった。

 運営面を任されているロン・グーレイではなく、オーナーが直々に解雇を告げている点も、チェルシーにしては良心的だった。ビラスボアス以前に、「側近」経由の解雇通達という屈辱を受けずに済んだのは、元々オーナーと友人関係にあったアブラム・グラントのみ。カルロ・アンチェロッティなどは、CL優勝実績を持ち、チェルシーに二冠をもたらした翌年だったにもかかわらず、無冠で終えた昨季最終節終了後のトンネル内で、グーレイから解雇決定を聞かされている。

【次ページ】 オーナーの意向はモウリーニョかペップの招聘だが……。

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