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頓挫したビラスボアスの「3年計画」。
迷走するチェルシーはどこへ行く? 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2012/03/15 10:30

頓挫したビラスボアスの「3年計画」。迷走するチェルシーはどこへ行く?<Number Web> photograph by AFLO

解雇されたビラスボアス(左)と、暫定監督のディマッテオ。長期的展望のない監督交代劇が続けば、クラブの先行きは暗いものにならざるを得ないだろう。

以前にも候補に挙がったベニテスはサポーターが拒絶。

 主力の大幅な入れ換えが必要なチェルシーにすれば、監督の異常な高年俸は避けたいところだ。先頃報告された2010-2011シーズンのクラブ収支は、6800万ポンド(約88億円)の赤字。現状維持でも、健全経営を要求するUEFAの新規定による、今後3シーズンで4500万ユーロ(約52億円)という損失上限を大きく上回ってしまう。

 2月の時点で後任と噂されたラファエル・ベニテスは、両名より廉価な現在無職で、プレミア経験とCL優勝実績を持つオプションではある。しかし、サポーターに敵対視されている人物がチーム再建に適任とは言い難い。モウリーニョ時代に因縁が生まれた元リバプール監督への拒否反応は、ビラスボアス解任後の初戦となった、6日のバーミンガム戦(FAカップ第5ラウンド再試合)でのチャントを聞けば明らかだ。アウェイゲームに駆けつけた熱心なサポーターたちは、「うせろベニテス、お前なんぞ欲しくはない」と繰り返し歌っていた。

暫定監督のディマッテオもすでに“解任秒読み”!?

 そのバーミンガム戦で指揮を執ったのは、助監督から今季末までの暫定監督に昇格したロベルト・ディマッテオだ。選手としてはチェルシー・レジェンドの1人であり、監督としても、攻撃的なサッカーでウェストブロムウィッチをプレミアリーグ昇格に導いた実績を持つ。但し、正監督に抜擢される可能性は極めて低い。昨年2月に監督を解任されたウェストブロムウィッチでの勝率は、今回のビラスボアスと同じ48%。元スター選手としてのプライドが災いしてか、現役スターには助監督としても敬遠され、ベテラン勢との間の溝は前監督より深いとの内部情報もある。

 当のディマッテオも、暫定監督としての白星発進後(2-0)、「正監督就任を依頼されたら?」と問われて、「考えさせてもらわなければ」という間接的な「ノー」を口にしている。疲労困憊の表情と口調は、自身と同じ若手監督の早期解任劇の渦中でうんざりしている風でもあった。

 バーミンガム戦後の記者席では、「見出しは『ディマッテオ解任秒読み』だな」と言って笑う英国人記者もいた。だが、チェルシーに限っては、冗談とは限らない。敢えて過渡期を任せたはずの34歳を8カ月で更迭するクラブであれば、その補佐役だった41歳を、今季末までの2カ月半の間に見限る可能性はある。

 不安定だったビラスボアス下でのパフォーマンス以上に、長期的安定の目処が立たないチーム事情を嘆いて久しいサポーターたちは、混沌とした過渡期第2幕が明けたバーミンガム戦のスタンドで、自嘲気味に歌った。

 「ロマン・アブラモビッチは意のままに解雇するぞ!」と。

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