セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
無敗街道を疾走するユベントス。
王者ミランとの首位攻防戦はどうなる?
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2012/02/25 08:02
首位ACミランに勝ち点1差で迫るユベントス。2月25日の直接対決に注目が集まる
常勝時代のユーベを知るコンテの非情なまでの決断力。
まずコンテは、昨季のシエナ時代にセリエBを席巻した虎の子の布陣4-2-4をあっさり捨てた。自らの代名詞だった戦術もセリエAを戦う上で現有メンバーに不向きと見るや、5節カターニャ戦を境に迷わずお蔵入りさせたのだ。
ピルロを不変の軸に据えつつ4-1-4-1、4-3-3を経て、現在は3バックと両サイドハーフの動きが鍵を握る3-5-2に活路を見出す。自らのアイデアへ固執せず、的確に戦況を見極める“勝負師”としての決断力は際立っている。
意思を同じくした少数精鋭での戦いを好むコンテは、不良債権と化していたベテランFW3人(アマウリ、イアクインタ、トニ)も今冬の移籍市場で一気に放出した。
昨季の目玉だったクラシッチや南アフリカW杯準優勝メンバーのエリアですら自らのコンセプトに合致せず、と戦力構想から外す。
集団としての一体感を高め、チームへ適切な緊張をもたらすため、温情は与えない。これこそ自らキャプテンマークを巻いた常勝時代のユーベにあった厳しい不文律だ。
「コンテは賢明な監督になった」とリッピは後押し。
1994-1995シーズン、コンテをはじめパウロ・ソウザやディリービオが顔を揃えた中盤に加え、ビアリとラバネッリ、そして若き日のデル・ピエーロによるFW陣を擁したユベントスは、長らく遠ざかっていたスクデットを9年ぶりに獲得した。
コッパイタリアも制し2冠を達成すると、指揮官リッピとともにその後の黄金時代を築き上げる。
今シーズンの戦いぶりを見守るリッピは「あの年に勝ったチームと今のユーベは似ている。コンテは賢明な監督になったようだが、サッカーへの熱と勝ちたいという意欲が選手たちにも伝わっている」とかつての愛弟子を後押しする。
無敗のまま冬の王者を獲得したユベントスは、国内での試合に集中できるアドバンテージもあり、俄然スクデットへ本命視されるようになった。ただしリッピ時代とちがって、エスティガリビアやリヒトシュタイナー、マトリといった現チームの主力たちは国際的にほぼ無名。コンテも監督としてはまだ駆け出しにすぎない。