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青木真也の“全米デビュー”が担う、
日本格闘技界の浮沈。 

text by

橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph bySusumu Nagao

posted2010/04/14 10:30

青木真也の“全米デビュー”が担う、日本格闘技界の浮沈。<Number Web> photograph by Susumu Nagao

「普通にやって普通に極めます」と豪語している青木。対戦相手のメレンデスはこのタイトル初防衛戦となる

狙うは“PRIDE喪失”からの脱却。

 もちろん、負けた場合のリスクは大きい。青木は「僕が負けたらDREAMが終わる」とまで言っている。日本では、多くの人間が“PRIDEを失ったこと”を引きずり、世界的なブームを見渡せていない。世界と対峙する唯一の存在である青木が負ければ、その傾向はさらに強まるだろう。ファンはいま以上に世界的なMMAの隆盛から目を背け、“PRIDEがあった時代”への郷愁とともに狭く、閉じた世界に引きこもってしまうことになるのではないか。

 そうさせないためにこそ、青木は敵地に乗り込むのだ。彼が狙っているのは、日本人格闘家のレベルの高さを“全米地上波中継”でアピールし、日本の格闘技界を世界的MMAブームにリンクさせることにほかならない。世界の目を日本に向けさせ、日本の目を世界へ向けさせる。日本の格闘技ビジネスを世界レベルに引き上げ、“PRIDE崩壊=格闘技ブーム終焉”という日本の常識をひっくり返す。PRIDEがなくなっても、格闘技がつまらなくなったとは言わせない。太平洋の向こう側から、青木は日本に熱を吹き込もうとしているのだ。

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青木真也

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