濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
日本のトップが米国で完敗した!!
青木真也が感じた大きすぎる実力差。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph bySusumu Nagao
posted2010/04/19 11:30
「完敗でした」
大会終了後に行なわれた記者会見での、青木真也の第一声である。
4月17日、アメリカ・テネシー州ナッシュビルのブリヂストン・アリーナで開催された『STRIKEFORCE NASHVILLE』で、青木はギルバート・メレンデスが持つライト級王座に挑戦し、判定の末3-0で敗れた。ジャッジの採点は3者とも50-45。すべてのラウンドをメレンデスが支配したということだ。DREAMとSTRIKEFORCEの王者対決は、DREAM王者の完敗としか言いようがなかった。
青木の最大の武器であり、世界最高レベルと称されるグラウンド・テクニックは、メレンデスの巧みな戦略によって完全に不発に終わった。
タックルはことごとく切られ、仰向けになって寝技に引き込んでも充分な体勢を作ることができない。メレンデスはすぐに立ち上がるか、金網に青木の上体を押し込んでいくことでガードポジションからの仕掛けを未然に潰してしまうのだ。
青木への罵声までも引き出した、メレンデスの高等戦略。
青木がたびたび見せた、しゃがんだままで相手を追いかけて足を取ろうとする動きには容赦のないブーイングが浴びせられた。
アメリカの観客には、この日の青木の闘い方が自ら寝転がって相手を誘う“Bitch”に見えたのだ(実際、客席からはその言葉が聞こえてきた)。そして罵声の量と比例するように、青木の顔が腫れ上がっていく。
メレンデスにとっては、パーフェクトな試合展開だったはずだ。
パンチで圧力をかけながらタックルが絶対に届かない位置をキープし、グラウンドでは決して深追いしない。パウンドを少しずつ的確にヒットさせるものの、メレンデスは無理にKOを狙おうとはしなかった。打撃の連打という自身の持ち味を犠牲にしてでも、青木の長所を殺すことを選んだのである。
その成果として、彼は日本格闘技界を背負ってアメリカに乗り込んできた寝技師を“売春婦”にまで転落させることに成功し、すべてのラウンドでジャッジの支持を獲得した。