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圧倒的世界一の柔道家・中村美里。
原動力は北京五輪の銅メダル。 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byShino Seki

posted2010/04/13 10:30

圧倒的世界一の柔道家・中村美里。原動力は北京五輪の銅メダル。<Number Web> photograph by Shino Seki

世界ランキング1960ポイントは、2位カラスコサ(スペイン)の798ポイントを大きく引き離しての1位。北京五輪後、上半身はシャツがSSからSにサイズアップした

 優勝しても表情ひとつ変えない。まるで、勝つのが当然であるかのようであった。

 4月3、4日に行なわれた柔道全日本選抜体重別選手権。4日に行なわれた女子52kg級を制した中村美里は、風格さえ感じさせた。

 昨年4月28日に20歳を迎えてから無敗である。連勝は25となった。その間、世界選手権など5つの国際大会で優勝している。

 当然、現在の世界ランキングは1位。合計1960ポイントは、男女全階級を通じて圧倒的なトップだ。

「自分の柔道ができれば負けないと思います」

 と中村本人も語るが、その言葉になんの違和感もない。

 この日、中村は決勝で西田優香と戦った。西田は'07年の世界選手権で銅メダルを獲得したように、中村の台頭以前はこの階級の第一人者であった。昨年の全日本選抜体重別決勝で中村を破るなど、実力双璧のライバルと目されてきた。

 その西田相手に中村は、投げてのポイントこそなかったものの、隙を一切与えず、まったく危なげない柔道を見せた。これで西田との対戦も、昨年12月の国際大会「グランドスラム東京」の準々決勝に続き連勝。両者の差が開いた格好だ。

相手の対策を上回る多彩な攻撃で世界トップを独走。

 戦績面もさることながら、ここ1年の内容の成長も目覚しい。

 もともと小外刈りなどの足技が武器である中村だが、昨年は寝技も巧みに織り交ぜての勝利が目立った。そして今回は、今まで試合では見せなかった内またや、全日本女子の園田隆二監督も「びっくりしました」と言う背負い投げも積極的に仕掛けた。

「小外刈りが警戒されてかかりにくくなってきているので、ほかの技も練習してきました。試合では無意識にそれらの技が出ました。練習がしっかりできているんだと思います」

 それにしても、壁にもあたることなく、成長を続けてきた理由はどこにあるのか。答えは中村が所属する三井住友海上柔道部の柳沢久監督が以前語った言葉にある。数々の五輪メダリストを見てきた指導者だ。

「今まで教えてきた中でも、中村はほんとうに向上心がすごいんです」

 それを物語るエピソードのひとつが、下半身の強化だ。中村は今大会に備えて、取り組んできたことのひとつを次のように語った。

「鏡で見ていて、上半身はがっちりしているのに、下半身が細いな、と思って」

 下半身の強化に取り組んできた。しかもそのメニューは、自分自身で考えて実践しているのだと言う。

【次ページ】 五輪での敗北は、五輪でしか取り返せない。

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