プレミアリーグの時間BACK NUMBER
宮市亮が放った「輝き」と「甘さ」。
プレミアデビューを現地はどう見たか?
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byPress Association/AFLO
posted2012/02/13 11:55
稲本潤一、戸田和幸、中田英寿に続く4人目の日本人プレミアデビューを飾った宮市亮。“アーセナルの主力”という目標に向け、大きな一歩を踏み出した
全国区メディアは、好意的だが厳しい評価。
ボルトンでは、アーセナルでの先輩に当たるジャック・ウィルシャーが、一昨季後半に、やはり短期レンタルで活躍した前例がある。
当時18歳だったウィルシャーは、ボルトンの司令塔としての半年間を経て、アーセナルの主力へとステップアップを遂げた。移籍直後に、「ジャックからは、ボルトンで実戦経験を積めば成長できると言われました。自分も成果を上げられるように頑張りたい」と話していた宮市は、ウィルシャーの後輩に降格回避の実現を期待するボルトン・サポーターの目の前で、上々のスタートを切ったと言える。
ただし、全国区のメディアによる宮市評は、「印象的」という好意的な形容詞が使われていたものの、評価の平均は10点満点で6点程度。45分間の出場では止むを得ないが、守備面に見られた甘さが、攻撃面での効き目を相殺した感もある。
例えば、失点を招きかけた61分のプレー。カウンターを浴びたきっかけは、ケビン・デイビスの緩慢なドリブルだが、手前にいた宮市が全力で自陣内に戻っていれば、ルーズボールの競り合いに敗れて、ビクトル・モーゼスに走られることはなかっただろう。モーゼスのマークを受け渡した後、背後のジェイムズ・マッカーシーに目をやって走り出したまでは良かったが、ボールに気を取られて、フリーでボックス内への侵入を許している。クロスに合わせたマッカーシーのシュートがGKの正面をついて事なきを得たが、一つ間違えば、チームは2点差のハンディを背負い、得点者を逃がした宮市のマークが責められる結果となっていた。
レギュラー奪取には守備面でも貢献する意識がカギ。
降格圏内に低迷して久しいボルトンにとって、不用意な失点はチームへのプレッシャーを増し、集団としての自信を低下させるだけだ。攻撃陣といえども守備を疎かにしてはならない。新ウィンガーを、「まだ体の線は細いが芯の強さがある」と評価している指揮官にすれば、球際の強さを含めて、突破力以外にも期待する部分があるはずだ。
当人には、アーセナルでのカップ戦2試合目で、アーセン・ベンゲル監督から「後方を意識するように」との指示を受けて投入された経験もある。アップダウンを繰り返すスピードとスタミナがあり、フィジカルも弱いわけではない宮市が、守備面でも貢献する意識を強めれば、右サイドに定着しているクリス・イーグルス、骨折から復帰中のイ・チョンヨンら、ハードワーカーとは言い難い他のウィンガーを抑えて、攻守両面でポジション争いの勝者となる確率は高まる。