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ドイツサッカーに新風吹き込む、
ふたりの“なでしこ”。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2010/04/01 10:30
なでしこジャパンでも存在感を増す安藤。欧州での経験が女子W杯で生きるはず
これまでも、高かった。それが今、さらに高まっている。
ドイツにおける日本の女子サッカーへの評価である。
昨年7月、ドイツのマンハイムでドイツ代表と日本代表の試合が行なわれた。女子の欧州選手権を控えていたドイツ代表と戦った日本は0対0の引き分け。この前後の練習試合では大勝を重ね、欧州選手権でも全勝で優勝を決めたドイツが、唯一苦しめられたのが日本だった。
試合の前日、日本代表がスタジアムで公式練習を行なっている様子を、食い入るように見つめる2人のドイツ代表選手がいた。リンダ・ブレソニクとファトミレ・バイラマイだ。
「2人とも熱心に見ているでしょ? 特に、バイラマイなんかは『私は日本サッカーのファンなの。日本のサッカーってコンビネーションが良くって、速く、細かく動いて、チェスみたい』って話していたわ」
ドイツ人記者がそんなことを教えてくれた。
それから半年後の2010年1月、ブレソニクのいるFCR2001デュイスブルクに安藤梢が、バイラマイのいる1FFCトゥルビーネ・ポツダムに永里優季が加わった。
女子版バルサとレアル・マドリーに日本人選手がいる!?
デュイスブルクは昨季のUEFA女子カップ(今季から女子チャンピオンズリーグに改称)とドイツカップのチャンピオンであり、ポツダムは昨季の女子ブンデスリーガのチャンピオン。FCバルセロナとレアル・マドリーに、日本人選手が1人ずつ加わったようなもの、と言えば分かりやすいだろうか。
デュイスブルクのマルティナ・フォス・テクレンブルク監督が「CL、リーグ、カップの3冠を目指す上で、アンドウを獲得出来たことは大きな意味を持つ」と語れば、ポツダムのベルント・シュレーダー監督が「ナガサトはすぐにチームの中核を担う存在になると思う」とほめちぎった。
ドイツではトップ選手として遇されている安藤と永里。
極東からやってきた彼女たちは、すでにスター選手の扱いを受けている。TV局の『WDR』は安藤の密着取材を行ない、数分間のドキュメンタリーを作成した。『メルキッシェ・アルゲマイネ』紙は、「シュレーダー監督が“怪物”と称する22歳」と記し、永里のこれまでの経歴を事細かに紹介している。
実際、2人は加入直後からFWとして期待に恥じない活躍を続けている。安藤が6試合で3ゴールを、永里は6試合で4ゴールをマークしている。3月24日の直接対決では、2人揃ってスタメン出場を果たした。