セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
次期監督問題でイタリア迷走。
王座防衛に早くも黄色信号。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byUniphoto Press
posted2010/03/21 08:00
リッピの後任候補筆頭は、チェーザレ・プランデッリ。フィオレンティーナを率い、CLでも実績を残した
4年前とは、何もかもがちがっている。
2006年の春、イタリア代表はW杯ホスト国ドイツとの親善試合で4対1の完勝。充実した戦力をもって、チーム完成度と本大会への自信を深めた。翻って、今月3日の対カメルーン戦でアズーリが見せたのは、退屈極まりないスコアレスドローだった。
「このアズーリには、あくびしか出ない」(『ガゼッタ・デロ・スポルト』)とまで貶められた現王者。このままでは、6月に取り返しのつかないことになるのは明白だ。
去就を明確にしないリッピ監督に協会も選手も辟易。
代表に未だ一体感が見られないのは、指揮官リッピの去就に対する曖昧な態度が影響している。続投か否か、返事を保留し駆け引きを続けるリッピに、いよいよイタリア協会側も業を煮やし始めた。
ベスト8に終わったユーロ2008の後、発足したリッピ第2次政権は昨年夏のコンフェデ杯で惨敗し、激しい非難に晒された。協会はリッピ擁護の立場を崩さなかったが、本人は南ア大会本番、さらにそれ以降の明確なビジョンを提示せず。長引く下交渉に辟易したアベーテ協会会長との関係は、もはや良好とはいえない。
2012年欧州選手権予選を睨んで、アンチェロッティ(チェルシー)やラニエリ(ローマ)、ジェンティーレ(前U-21イタリア代表監督)などの名前が次期監督候補として挙がるも、最も熱望されているプランデッリ(フィオレンティーナ)の去就も判然としない。協会が本格交渉に入る前に、クラブは5年の契約延長をオファー。プランデッリもまんざらではない様子を見せている。大会後にやはり指揮官交代のゴタゴタが避けられないとなれば、敏感な選手たちがそれを感じ取らないわけがない。
ドイツ大会よりも小粒な現勢力にイタリア国民は納得せず。
カメルーン戦で初招集したDFボヌッチとMFコッス、そしてGKシリグを含めると、リッピは代表監督就任以来、計101人の選手を代表で試してきた。それぞれがキャリアのピークにあったドイツ大会優勝メンバーの充実ぶりと比べると、どうしても現アズーリには小粒感が漂う。
頑固に否定され続けたせいか、巷の「カッサーノ待望論」はようやく静かになったが、決定力不足は解消されないまま。今度は“U-21代表のFWバロテッリを抜擢せよ”とのメディア・キャンペーンが始まった。リーグ戦で低迷するユベントスの守備ユニットを、まるごと移植した「ユーベ・ブロック」も説得力を欠く。
リッピはCBネスタを復帰させるべく熱心に口説いたが、代表引退の決心は変わらず。さらに右ひざ腱損傷が発覚したことでネスタ復帰は完全に消えた。最終メンバーは6、7人をのぞいてほぼ確定しているが、それがイタリア国民を納得させるものではないことは確かだ。