黄金世代、夢の行方BACK NUMBER
小笠原代表復帰を見つめた播戸竜二。
“猛烈な危機感”でC大阪にかける。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byKenta Yokoyama/PHOTO KISHIMOTO
posted2010/03/19 10:30
2月11日、東アジア選手権の香港戦、播戸竜二は、久しぶりに日本代表の試合に釘づけになった。画面の向こうには、ナイジェリア・ワールドユース準優勝の“戦友”が出場していた。
「満男が出ていたからね。だって、同世代やし、昨年、あれだけ結果を出して、MVPにも選ばれたわけやんか。で、今回、代表入ったんで、岡田さんがどんな感じで起用するんやろ。満男は、どんなプレーするんやろって、すごく気になった」
小笠原の動きを食い入るように見ていたが、時間を追うごとにどこか窮屈そうにプレーしているように見えてきた。鹿島にいる時は、もっと自分のやりたいようにプレーし、それが彼の良さを際立たせていた。だが、テレビに映る“30歳の新人”はコンセプトに縛られ、やらないといけないことをやろうと苦心し、本来の良さが消えてしまっていた。
播戸が見た代表の小笠原には、怖さが無くなっていた。
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「うーん、楽しそうにやれてはいなかったなぁ。ほんまは、鹿島でやっているようにできたらええんやけど、代表に入ったばっかりやし、その中で自分を出すのは難しいんやろなぁと思ったね。ちょっともったいないよ。満男には、今の代表にないもんとかも求められていると思ったからさ」
播戸は、もどかしい思いを伝えたくて小笠原に電話をした。すると、電話番号が変更されており、繋がらなかった。
「ふざけんなって思ったけど(笑)」
だが、小笠原の力なら、この先も生き残れると思っていた。なぜなら、播戸は、ガンバ時代、再三、小笠原に痛い目に合わされ、その底力を知っているからだ。特に、昨年、Jリーグ第33節、頂上決戦となった鹿島戦では、小笠原の活躍で1-5という屈辱を味わされた。30歳になってもチームのエースとして質の高いプレーしている姿に、播戸は同世代として畏敬すら感じたのである。それだけに、小笠原の日本代表復帰は、自分のことのように嬉しかった。停滞気味だった日本代表に、新しい風を吹かせてくれるのではないかと期待した。しかし、テレビの画面に映る姿は、あの時の脅威の満男ではなかった。