濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
引きこもりだったキックボクサー。
ファイヤー原田、37歳で涙の引退式。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2011/10/25 10:30
引退セレモニーで仲間に囲まれるファイヤー原田(写真前列中央)。2003年のプロデビューから約8年、37歳で現役生活に幕を閉じた
ファイヤーと仲間を繋いだリングとの別れ。
そんな男の引退を、ひっそりと終わらせることはできない。
ファイヤーは8月21日、黒田アキヒロとのJ-NETWORKライト級タイトルマッチでKO負けした直後、控室で引退を表明していたが、団体側は正式な引退セレモニーを10月16日に用意した。かつて拳を交えた黒田、川井りん太郎、梶原龍児、石川直生が花束を渡し、その光景をリング下では仲間たちが、客席ではファンが見守った。ファイヤー原田をファイヤー原田たらしめた要素が、そこにはすべて揃っていた。
「夢は叶わないこともある。でも、夢を追い続けたからこそ素晴らしい出会いがあった」
引退セレモニーでそう語ったファイヤーの心情は、足元にも表れていた。スーツ姿で、しかし靴は脱いで最後のリングに上がったのだ。それが、自分の人生をかけた場所、出会いを与えてくれた場所への礼儀だった。
今後は、3年前にオープンしたジム『ファイヤー高田馬場』の会長職に専念することになる。有力なプロ選手を輩出しているわけではないが、一般会員が楽しく汗を流せるジムとして知られている。そこで彼は、かつての自分のような会員たちに「頑張れ」と声をかけ続けるのだろう。