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“ビッグ3”藤岡・菅野・野村はどこへ?
ドラフト完全解説 【大学・社会人編】
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/10/07 10:30
東海大の菅野は10月1日、帝京大を4安打完封し、通算14完封のリーグ新記録を樹立。最速157キロの直球に加え、新たに会得したシュートなど変化球も冴えた。今年に入り更新したリーグ記録は、最多連続イニング無失点53回、シーズン5完封に続き3つ目に
投壊現象に悩む広島が地元出身の野村獲得に動くが。
不安は藤岡、菅野にくらべ、今秋の内容がよくないこと。6回投げて7自責点を喫した法大1回戦をはじめ、つい最近となる10月3日までの過去4試合ではすべてで自責点を記録しているのだ。顕著なのがスピード不足。
9月19日の法大戦が143キロ、10月1日の慶大戦が144キロと、自己記録に5、6キロ及ばない週が続いている。高低、コーナーの出し入れとともに、野村のピッチングの重要な要素になっている「緩急」が満足に使えていない。本誌の取材でウエートトレーニングのことを聞かれた際、「しなりで投げるタイプなので筋肉が硬くなるのが怖い」と言っているが、シーズン終了後にはプロを射程にした体作りをしなければいけないので、そろそろ着手する頃合いだろう。
この野村の1位指名を表明しているのが広島。地元・広陵高出身でスター性の高い野村の獲得は“地元優先”を宿命づけられた広島にとって当然と言える。さらに14年連続Bクラス(今シーズンを含む)をさまよう最大の原因となっている投壊現象を解消するためにも、即戦力候補の野村の獲得は急務だ。
[註] 広島の今季チーム成績(10月1日現在)=打率.252(リーグ2位)、得点403(4位)、防御率3.33(5位)、失点455(5位)
この野村の単独1位指名も難しそうだ。広島以外では日本ハムが獲得を匂わす発言をし、明大に強力なパイプを持つ星野仙一監督(明大OB)率いる楽天の動向も微妙で先が見えない。
攻撃に厚みを出したい阪神は走攻守揃った伊藤を単独指名。
伊藤隼太には早くから阪神が1位指名を表明している。スカウト陣は高橋周平(遊撃手・東海大甲府)を推す声が強いが、フロントの目には時間がかかる高校生より、即戦力かつ早慶戦で活躍したスター性の高い伊藤のほうが魅力的に映るようだ。
最大の魅力は走攻守が高いレベルで揃っていること。現在の阪神攻撃陣はマートンのアメリカ復帰、鳥谷敬のFA移籍など不透明な部分が多く、さらに城島健司の故障が長引き、金本知憲の年齢的後退も顕著で、伊藤は喉から手が出るほどほしい選手。現在の状況では阪神の単独1位指名がほぼ確定的と言っていいだろう。