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5人の王者が競う贅沢なバトル発生!
ベッテルが生んだモンツァ新伝説。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byHiroshi Kaneko
posted2011/09/21 10:30
「ベッテルとポジション争いをする時は、少し厳しくしていかないといけないね」とアロンソから宣言されたベッテル。これから後半戦のバトルでは、ますます激しい競り合いが観られることは間違いない
ルール違反寸前の力走で引退説を一蹴した皇帝の意地。
その後方では史上最多7度の王座に輝いたシューマッハーが、復帰以来、久しぶりに見応えのあるレースを展開していた。
スタート直後に8番手から4番手に浮上したシューマッハーは、セーフティカーラン明けの4周目にハミルトンをパス。その後、26周目までハミルトンを押さえ込む。
現在のF1はブレーキング時に進路変更は1回しか行ってはならないとレギュレーションに定められており、シューマッハーはそれを何度か違反していたようにも見えた。しかし、このレースで重要なことはシューマッハーが違反していたかどうかではなく、引退が囁かれている元チャンピオンが限界で戦う姿を見せたことではないか。
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しかも、レース中に担当エンジニアから再三「進路変更を無闇に行うな」と指摘を受けていたものの、いっこうにやめる気配がないため、チーム代表 のロス・ブラウンが直々に無線で注意を促し、なだめすかしたほどの熱い走りを見せてくれたのである。
5年前に引退を発表したサーキットであるモンツァで再び見せてくれた皇帝の走りは、現役続行を強調するような力走だったといえよう。
ふたりの王者を追い抜き、バトンは悪評を吹き飛ばした。
そのシューマッハーをオーバーテイクした'09年の王者バトンは、その後アロンソも追い抜き、このレースで唯一2人のチャンピオンを差したドライバーとなった。
'09年に王座に輝いたバトンには、悪しき評判がまとわりついていた。それは「'09年を制することができたのは、シーズン前半にダブルディフューザーを手にしていたからだ」とか、「勝つのは雨がらみのレース」というものだった。
しかし、今回高速モンツァのドライコンディションのレースで、見事なオーバーテイクを2度も披露。これまで持っていた安定感だけでなく、チャンピオンドライバーとしてあるべきスピードもきちんと兼ね備えているところをしっかりとアピールしていた。