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5人の王者が競う贅沢なバトル発生!
ベッテルが生んだモンツァ新伝説。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byHiroshi Kaneko
posted2011/09/21 10:30
「ベッテルとポジション争いをする時は、少し厳しくしていかないといけないね」とアロンソから宣言されたベッテル。これから後半戦のバトルでは、ますます激しい競り合いが観られることは間違いない
マッサとウェバーが2コーナーで交錯し、直後を走っていたバトンが2人の前に出た瞬間、イタリアGPのトップ5は、特別なドライバーたちによって独占された。それはいずれもチャンピオン経験者。今年のイタリアGPは、後世に語り継がれる史上稀に見るレベルの高いレースとなった。
まず、スタートで魅せたのが、2005年と'06年に当時、最年少でV2に輝いたアロンソである。4番手から好発進したアロンソは一瞬、芝生に片輪落とすものの、ベッテルとハミルトンのフロントロウ2人とサイド・バイ・サイドで1コーナーへ。レイトブレーキングでホールショットを奪い、日曜日にモンツァに詰めかけた9万人のティフォシたちを興奮させた。
そして、そのアロンソをオーバーテイクして、ティフォシたちを静まらせたのが、ディフェンディングチャンピオンのベッテルだ。
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セーフティカーランが解除された翌周の1~2コーナーであるシケインを立ち上がったベッテルは、続く3コーナーのクルバ・グランデで、なんとアウトからアロンソを豪快にオーバーテイクするのである。
他チームとは異なる作戦でコーナーを攻略したベッテル。
通常、高速モンツァではストレートエンドがパッシングポイントとなる。しかし、ピークパワーでメルセデスやフェラーリ・エンジンに劣るルノー・エンジンを搭載するレッドブルは、異なる方法でモンツァを攻略した。それは高回転時のパワーで勝負するのではなく、低回転時のトルクとそれに合わせたギアレシオでコーナーを素早く立ち上がるというものだった。
シケインを立ち上がって小刻みにシフトアップしていくレッドブルは、絶対スピードこそライバルより低かったが、最高速に達するまでの時間が短かった。ベッテルがコーナーの途中でアロンソの脇に入って行けたのは、そんな理由からだった。
速さだけでなく、コースによって柔軟に作戦をアジャストする能力。これがレッドブルとベッテルを今年2連覇へと導く大きな原動力となっている。