野球クロスロードBACK NUMBER
全然打てなくても守りきって勝つ!
落合流、攻撃的投手陣の証明。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2011/09/20 11:40
勝っても負けても僅差の試合が続くなかで、「1点余分にあればそれで十分」「やるべきことをやれるかどうか。無理なことをやろうとしても空回りするだけ」と軸をぶらさず淡々と戦い続けている落合博満監督
投手陣に全てを託した、落合流采配。
山井が今季初勝利を挙げた7日の巨人戦では、「(3対2の結果に)1点余分にあれば、それで十分」と満足げに答えた。
翌日は0対0の引き分けだったが、9回途中を3安打に抑えたソトなど、12回を無失点で切り抜けた投手陣に対して、「よくピッチャーが持ちこたえた!」と感嘆符がつくような讃えようだった。14日の阪神戦でも、山井の暴投をきっかけに同点とされ、結果的に敗れはしたものの、「これが野球。何のミスもなく終わらない」と、投手を責めることはなかった。
指揮官は、投手陣に優勝の大きな可能性を見出し、命運を託しているのだろう。17日の巨人戦での采配がそれを如実に物語っていた。
1点差で勝つ試合を作るため、セオリーを変えることも。
7回に1点を勝ち越し、2死ながら一、二塁のチャンスの場面で先発のネルソンに打席が回る。
セオリー通りなら代打であるこのケースで、指揮官はそのまま打席に送る。ネルソンはファーストゴロに終わったが、その裏の巨人の攻撃を無失点に抑え、続投の期待に応えた。
さらに驚かされたのが9回だ。2死一塁の場面で、8回からマウンドに上がっていた浅尾拓也も打席に立たせたのだ。
結果はセカンドゴロ。最終回、1死一塁とピンチを作りマウンドを岩瀬仁紀に託した浅尾は、「ピンチを作って交代してしまいました。次はしっかりと抑えたいです」と反省の弁を述べたが、落合監督からすれば、それも想定内だったのだろう。笑みを浮かべながら試合を振り返った。
「ああいう形になればとか、こういう形になればとか、そんなことはありません」
指揮官からすれば、戦況を詳細に見極め、「1点差でも勝てる」継投を施したに過ぎなかったのだ。