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天皇杯でのJ1vs.大学で注目対決。
“ジャイアントキリング”なるか?
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byAFLO
posted2011/09/10 08:01
筑波大学を率いる風間八宏監督。2004年にJFA公認S級コーチライセンスを取得し、2008年から筑波の監督に就任。今年、4年ぶり25回目の天皇杯出場を果たした
9月3日、第91回天皇杯の1回戦がスタートし、2回戦のカードが決まり始めた。
松田直樹さんが所属していたJFLの松本山雅が福井県の丸岡フェニックスに順当に勝利し、2回戦は10月8日に横浜FCと対戦することが決まった。
また2010年に設立されたばかりのFC KAGOSHIMA(前身の鹿屋体育大学クラブは1994年創設)が10月8日にアウェーでFC東京に挑戦する。
それぞれの対戦にいろいろな思いが詰まっており、いつも以上にメディアからの注目度が高い天皇杯2回戦になると思われる。
ここで個人的にピックアップしたいのが、J1チームvs.大学サッカー部という組み合わせだ。なぜならこのカードが最も“ジャイアントキリング”が起こる確率が高いと見ているからである。
もはや大学サッカーは“落ちこぼれ”の受け皿ではない。
最近、大学のレベルが急激に上がっていることは、ロンドン五輪を目指すU-22日本代表を見ればわかる。キャプテンを務めるのは流通経済大学の山村和也で、左サイドバックの比嘉祐介も同大学。エースの永井謙佑は今年3月、福岡大学を卒業したばかりだ。
本田圭佑や長谷部誠など、高校卒業後いきなりJリーグのクラブに入って成功する例も少なくないが、一方で試合に出られず、力を伸ばすチャンスを得られない選手が山のようにいる。実戦の場がなかったら、成長するのは難しいだろう。大学を“修行期間”として、フィジカル面とメンタル面に磨きをかけた方がはるかにいい。
1993年のJリーグ創立後に有望な高卒選手がプロに流れ、一時大学サッカー界は下火になったが、福岡大学の乾眞寛監督をはじめとする大学サッカー連盟の尽力により、今では多くの選手が大学経由でプロになるようになった。大学がなければJリーグ(特にJ2)が成り立たない……とスカウトたちが口にしているほどである。
大宮vs.福岡大学、鹿島vs.筑波大学の注目カードが実現。
では今回は、どんなカードがあるのか。10月10日に1回戦でHOYO AC ELAN大分を2-0で完封した福岡大学が、アウェーで大宮と対戦する。
すでに書いたとおり、乾監督は大学サッカー界を復興させた立役者のひとりだ。Jリーグに進めず“落ちこぼれ”意識を持った選手たちに自信を取り戻させ、浦和レッズの坪井慶介や名古屋の永井など、武器を持った個性的な選手を生み出し続けている。U-19日本代表経験のある3年生の清武功暉は、日本代表の清武弘嗣の弟。攻撃陣にも守備陣にもタレントがそろっており、相手がJ1のクラブとはいえ、簡単には負けないだろう。
また10月12日、1回戦では平成国際大学を2-1で破った筑波大学がアウェーで鹿島と対戦する。
筑波大学はユニバーシアード(全日本大学選抜)に4人の選手を送り込んでおり、これは流通経済大学の6人に次いで多い数字だ。その流通経済大学を茨城県予選の決勝で破り、天皇杯への出場を決めた。