プロ野球亭日乗BACK NUMBER
ヤクルト失速で混迷する優勝争い。
「8回」を凌ぐチームが乱セを制す!?
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2011/09/03 08:01
巨人の復調をセットアッパーとして支える山口鉄也。一昨年は最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得した山口だが、昨年から先発転向も模索されていた
阪神は小林宏を見切って榎田に8回を任せられるか?
だから「野球は8回だ」と考えたとき、今後のペナントレースの展開が、少し見えてくるのだ。
浅尾、山口と8回を信頼して任せられる投手のいる中日、巨人は残り2カ月弱のペナントレースを必ず優位に運ぶことができるだろう。
一方、追いつかれてきたヤクルトはリリーフ陣の再編が第1の課題。守護神・林昌勇の復帰で改めてバーネット、久古がセットアッパーとして固定できるか。そのセットアッパー、クローザーが確実に機能するかが逃げ切りの要件となる。
そして阪神も失敗の多かった小林にこだわらずに8月下旬からセットアッパーとして起用されているルーキーの榎田大樹投手を、このポジションに固定できるか。このルーキーが終盤のデッドヒートで役割を果たせれば、チームの総合力では抜きんでた存在となる可能性も高い。
信頼できるセットアッパーを擁する球団が混セを制す。
「勝負は下駄をはくまで分からないと言いますけど、下駄をはいて家に帰って風呂に入るまで分かりませんよ、ハイ!」
勝負の難しさをこう表現したのは、巨人の長嶋茂雄終身名誉監督だった。
もちろんゲームセットのコールがあるまで試合の行方は分からない。それでもまずきちっと鼻緒の切れない下駄を用意して、それをきちっとはくことができるか──それがセットアッパーを確立するということであり、残り約40試合のデッドヒートを制するための最初の条件となるだろう。