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究極の駐輪場を探し求めて……。
都心の各種駐輪場を総チェック! 

text by

疋田智

疋田智Satoshi Hikita

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photograph bySatoshi Hikita

posted2011/08/20 08:00

究極の駐輪場を探し求めて……。都心の各種駐輪場を総チェック!<Number Web> photograph by Satoshi Hikita

これが噂のハイテクロボット駐輪場!? パッと見て、すぐに何か分かる人は少ないかもしれないが……とにかく凄いんです!

放置自転車を駆逐した、山手線の地下駐輪場。

 かつて東京の山手線の駅前というのは放置自転車だらけであった。

 '99年に総務庁(当時)が発表した全国放置自転車ワースト・ファイブの栄えある1位は池袋駅。4位が巣鴨、それに、これは山手線ではないが、亀戸、蒲田がそれぞれ3位、5位に入っている。ちなみに2位は、福岡天神駅であったそうな。

 ところが、それから10年、東京都心の放置自転車、すなわち違法駐輪は、激減した。今ではワーストの上位を占めるのは、むしろ大阪、名古屋、福岡などの各駅前だという。

 なぜ東京の駅前放置自転車がかくも激減したかというと、一言、駐輪場の整備に尽きる。

 特に山手線の駅前については、改札口から歩いて1分以内にある「地下駐輪場」が増えた。

 たとえば写真にあげたのはJR山手線・田町駅前の地下駐輪場である。月極の他にビジターも可能で1回あたり150円。しかも2時間までは無料だ。

 管理人もいて、雨露がしのげて、もちろん盗まれる危険性は格段に低い。階段の横にはスロープがあって、そこには自転車を載せて運んでくれるベルトコンベアまでついている。

 こうした駐輪場が必ず駅前にあったなら、私は喜んで停めるな。1回150円なんて、盗難防止の保険と考えたなら(私はかつて38万円のロードバイクを路上に停めて、ほんの2時間後に盗まれた経験がある)激安料金だ。

 こうした駐輪施設は、田町のみならず、隣の浜松町、目白、渋谷、と、このところ急増していて、自転車乗りにとっては、非常にいいことだと思う。

 いや、自転車乗りのみならず、すべての市民にとってもいいことだと思う。

 その究極の形が、もしかしたら最後にあげる品川駅かもしれない。

品川駅港南口にて、ついに究極の駐輪場を発見!

 これまた駅前一等地である。

 目の前すぐに品川駅港南口があって、新幹線がひっきりなしに通っている。そこに公衆トイレほどの大きさの、何やらヘンなボックスが5つ。

 そばには「こうなん星の公園自転車駐車場」と書かれた看板がある。でも、おそらく初めて見た人にはどこがどう駐輪場なのか、さっぱり分からないと思う。

 その“ヘンなボックス”をよく見てみると「ECO Cycle」なんて書いてあるから、これが自転車と関係ありそうなことだけは分かるが、なにがどう駐輪場なのやら、だ。

 利用者がやってくると、不思議な現象が起きる。

 自転車に乗ってきた人は、その自転車をボックスの入り口のスリットに載せるだけ。すると、あれま、入り口から自転車が吸い込まれて、無くなってしまう。

 逆に、自転車を取りにきた人は、ICカードをセンサーにかざす。と、これまたあれま、入り口が開いて、そこから自分の自転車が現れるという寸法だ。

 これ、ハタで見ていても結構スゴい、というか魔法のような光景に見える。詳しいメカニズムはメーカーのウェブサイトを参考にしていただきたいんだが、まあ何だ、日本のロボット技術の一つの結晶といっていい。

・「耐震地下駐輪場 エコサイクル」

・GIKEN/株式会社 技研製作所
http://www.giken.com/ja/developments/eco_cycle/operation

 これならばもう盗難はあり得ないし、雨も平気、スペース効率も最高。

 問題があるとすれば、コストの話だな。1機204台収納可能。そこに1億円まではいかないが、ま、それに近い金額がかかる。ただでさえ安い自転車(ママチャリ)状況だ。「安い自転車を停めるのに、こういう高価なハイテク駐輪場はどうなのか?」というような声は容易に想像できる。

 だが、ではクルマの立体駐車場はどうなのか。要は「自転車は安いもの」「ランニングコストが無料のもの」というイメージ自体が間違っているのではないか、と私は思うのだ。

 駐輪コストにしても何にしても、これからは自転車にも少々カネをかけますぞ、という姿勢さえあれば、自転車状況はよりよいものになっていく。今の私はそう考えている。

 現場にいた管理人のオジさんに聞くと、現在は月極でしか稼働してないのだそうだ。

 将来的にこれがどう発展するかは分からない。私はかなりの期待を持ちつつ、見守っているところなのだ。

 いや、一口に駐輪場と言っても、実は深いのである。

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