スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
ジーターと3000本安打。
~大記録達成で想うイチローの価値~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph bySports Illustrated/Getty Images
posted2011/07/17 08:00
7月9日、レイズ戦で記録を達成し、観客の祝福に応えるジーター
よれよれ、という感じでデレク・ジーターが3000本安打に到達した。
失礼な言い方だろうか。
なるほど、この日(2011年7月9日)のジーターは、1試合5安打を記録した。記念すべき3000本目の安打も本塁打で飾った。アーチで大台を突破した選手は、彼のほかには1999年のウェイド・ボッグスだけだ。
もうひとつ、年齢という要素も考慮すべきかもしれない。
ジーターは2011年6月26日で37歳になった。37歳で3000本安打に到達したというのはずいぶん早い。彼より若くしてこの里程標を踏破したのは、タイ・カッブ、ハンク・アーロン、ロビン・ヨーントの3人しかいない。
さらにいうなら、ヤンキースのユニフォームだけを着てこの大台を突破した選手は、いままでひとりもいなかった。
ルー・ゲーリッグ=2721本
ベーブ・ルース=2873本
ミッキー・マントル=2415本
ジョー・ディマジオ=2214本
ドン・マッティングリー=2153本
ヨギ・ベラ=2150本
3000本安打は達成したが今季の成績は「よれよれ」。
もういいだろう。ルースはレッドソックス時代やブレーヴス時代の安打数を足しても、2873本にしかならなかった。ボッグスの場合はヤンキース在籍期間が5年間しかない。そう考えると、ジーターがヤンキースひと筋でこの記録を達成したのは、力量と幸運の両方に恵まれていたことを証明するものといってよいだろう。
ただ、2年前のジーターを知る者から見れば、「よれよれ」という形容はけっして不適切にはならないはずだ。
2009年シーズンの終了時点で、35歳のジーターは2747本の安打数を記録していた。しかもこの年、彼は打率=3割3分4厘、本塁打=18本、盗塁=30というピカピカの成績を残している。そう、あのピート・ローズにひけを取らないペース(ローズは同じ年齢で2762本の安打数を記録していた)でジーターは走っていたのだった。
ところが翌年、ジーターの成績は急降下した。打率=2割7分、安打数=179。36歳のローズが204安打を記録したのに比較すると、あきらかなペースダウンだ。そして2011年、ジーターの安打生産数はさらにペースを落とし、オールスター・ブレイクを迎えた時点で78本という結果しか残せていない。つまりこのまま行けば、今季のジーターは135本程度しか安打を記録できない計算になる。