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「下町気質」が引き起こす、
ウェストハム新オーナーの舌禍事件。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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photograph byAction Images/AFLO

posted2010/02/24 10:30

「下町気質」が引き起こす、ウェストハム新オーナーの舌禍事件。<Number Web> photograph by Action Images/AFLO

ウェストハムの新オーナーに就任したサリバン(左)とゴールド(右)。「筋金入りのサポーター」として、チームの再建に成功できるか?

大物FWに逃げられ、確保できたのは「激安」を含む3選手。

 短期間でCLに出場するという身の丈に合わない目標設定は、再びクラブの経営を揺るがせかねない。1月の移籍市場では、サリバンが「週給10万ポンド(約1500万円)の待遇でベテランの大物FWを獲る」と息巻いたが、幸いなことに(?)、「大物」は1人も獲得できなかった。獲れていたら、クラブの経済的な体力を超えた年俸提示という前オーナーと同じ過ちを繰り返すところだった。

 ただ、実際に獲得したFW3名の1人であるミドが、週給15万円程度の「激安」選手であるという現実は淋しすぎる。獲得が濃厚と思われた「準大物」のアイドゥール・グジョンセンは、プレミア4位を争える実力を持つトットナムに行ってしまった。新経営陣が広げた風呂敷が大きかっただけに、名うての新戦力を期待したジャンフランコ・ゾラ監督とファンの失望は大きかったはずだ。

契約無視の減俸宣告に温厚なゾラ監督も不快感を露わに。

 いざ移籍市場が閉幕すると、今度はチームの士気を劇的に下げるような発言がサリバンの口から飛び出した。

「経営状態が悪すぎる。監督も選手も不当に年俸が高い。降格なら全員25パーセントの減俸だ」

 クラブ財政の苦しさは、すでに周知の事実。加えて、監督にしろ、選手にしろ、契約にうたわれている待遇を経営者側が一方的に下げることなどできるはずもないのだから、全くもって無意味な、百害あって一利なしの発言だ。にもかかわらず、言わずにはいられないあたりも下町出身者の悲しい性だろうか。

 おまけに、このサリバンのコメントは、年末から勝ち星のなかったチームが勝たなければならない一戦であり、両共同会長の古巣との対戦としても注目された、バーミンガム戦の前日にあたる2月9日の朝刊に掲載されたのだった。この配慮のなさには、温厚な人柄で知られるゾラもさすがに不快感を露わにした。

「大事な試合の前日に公言するような話ではない。そもそも新聞記者に話す前に内部の自分たちに相談があっても良かったはずだ」

【次ページ】 「プレミア残留」に失敗すればふたたび倒産の危機が。

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