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激動のF1業界、ついに決着す。
~首領エクレストンが渡した引導~ 

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西山平夫

西山平夫Hirao Nishiyama

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photograph byHiroshi Kaneko

posted2009/06/29 06:00

激動のF1業界、ついに決着す。~首領エクレストンが渡した引導~<Number Web> photograph by Hiroshi Kaneko

F1界の首領、バーニー・エクレストン。FIA会長マックス・モズレーのクビを切って、ひとまず分裂は回避されたが……。

 第8戦イギリスGPは、3日間で31万人の観客を集め、同サーキットにおける観客動員数のレコードを作った。晴れたり曇ったり、最高気温23度のとても夏とは思えない典型的な“ブリティッシュウェザー”だったが、さいわい雨はなく、まずまずのレース日和に恵まれた。イギリスのレースファンにとっては何よりだったろう。

 記録破りの観客がシルバーストンに押し寄せたのには理由がある。

 ひとつはバトン人気で、開幕7戦6勝を飾った“無冠のヒーロー”ジェンソン・バトンの凱旋優勝をひと目見ようとファンが押し寄せたためだ。昨季、年間チャンピオンになったハミルトンと、遅咲きの新チャンピオン候補のバトン、2人のイギリス人ドライバーが走るとあっては、ファンにとって見逃せない一戦である。

 もうひとつは“さよならシルバーストン”効果。来年からイギリスGPはドニントンパークサーキットに移ることが決定している。1950年、記念すべき初のF1世界選手権が開催されたサーキットの“さよならレース”。F1ファンなら、ぜひその時間を共有したいと思うのも無理はない。

バトンもシルバーストンも吹き飛ばした分裂劇。

 ところが、レースウィーク口切となる金曜日朝のTVスポーツニュースは、「FOTAがFIAと決別、新シリーズ立ち上げ」の話題に終始。バトンのバの字も出なかった。

 というのも、前日深夜、FOTA(F1チーム協会)が、バジェットキャップ問題に端を発するFIA(国際自動車連盟)の専制横暴施政への対応を協議。その結果、「独立したシリーズ立ち上げやむなし!」と発表したものだから、グランプリ界は蜂の巣をつついたような騒ぎになったのだ。もはや、バトンの母国グランプリ初優勝なるかどころの話ではなかった。

 この日からFIAとFOTAによる声明発表の応酬が始まり、当初の予定では予選の土曜日に発表されるはずだったFIAの来季エントリーリストもなぜかキャンセル。FIAがフェラーリを契約違反で訴える準備をしているとも伝えられた。F1を主宰するFIAが、横暴な造反者FOTAに対し、事あるごとにもぐら叩きを演じているようにも見えるが、FOTAは無法な状況を打開したいがためにFIAと別れる決意をしたのだと主張する。

 FOTAに所属するトヨタF1チームの木下美明TMG副社長は、イギリスGP開催中、「問題はFIAにガバナンス(管理責任)がないこと」と語っている。

 具体的にはこうだ。

「レギュレーションの迷走状態をなんとかしたいの一点。FIAは『F1の規則は2年間の猶予をもって施行する』という条文をないがしろにし、チームとの協議など所定の手続きをなくしてしまった。たとえば、来年からF1は四駆とFIAが言えば、チームはそれに従わなければならない。エンジン規定にしてもV10からV8になり、3年間の開発の凍結。それが今度は4気筒ターボにする、10年間の凍結にする、V6ターボにする、最後は5年間の凍結にするといった具合に、1年間で5回もの変更がなされた。今、コンコルド協定が失効しているものだからチーム側にそれを止める権利がない。だから来年のエントリーに関してFIA、FOTA、FOM(フォーミュラーワン・マネジメント)の三者がサインすることを要求したが認められなかった。ボクらは虫けらじゃない。それを認めてもらえなかったならしかたがない」

【次ページ】 イギリスGPの3日後、FIAが白旗を揚げた……。

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