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Dynamite!!、決戦の構図を読む。
この大会で日本格闘技界は激変する。 

text by

布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2009/12/28 10:30

Dynamite!!、決戦の構図を読む。この大会で日本格闘技界は激変する。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

DREAMvs.SRC。全面対決の構図をどう読み解くか?

 魔裟斗対アンディ、吉田対石井とともに、今年のDynamite!!で三本目の柱となるのは、K-1傘下の総合格闘技イベントDREAMとSRCの全面対抗戦だ。

 PRIDEが消滅した2007年大晦日には、旧PRIDE派と当時K-1系の総合格闘技イベントだったHERO'Sらが大同団結し、『やれんのか!』を開催した。その結集したパワーは翌'08年まで持続し、DREAMを生み出す。

 その一方で、同時期にDREAMのオポジションとして立ち上がったのが吉田秀彦や五味隆典をエースとする戦極(現SRC)だった。

 今回の対抗戦が実現するまでDREAMと戦極が交わったことは一切なし。それだけに今回の対抗戦は価値がある。

 ただ、SRC勢の参戦は急に決まったため、関係者は契約体重などの調整に苦慮した。マッチメークもなかなか決まらなかったが、12月中旬からようやく対抗戦のカードも決まり始めた。

 なかでも話題を呼んでいるのは、青木真也vs.廣田瑞人、川尻達也vs.横田一則。そして山本“KID”徳郁vs.金原正徳という対戦カードだろう。

 青木と廣田は、DREAMとSRCの現役ライト級王者同士の一戦となる。

 青木が典型的なグラップラー(組み技系格闘家)ならば、廣田は典型的なストライカー(打撃系格闘家)。パンチの打ち合いになれば廣田有利が予想されるが、寝技になれば青木の独壇場になるのではないかと睨んでいる。

 勝負のキーポイントは“距離”。

 手足が長く懐が深い青木に対して、廣田はどのように距離を狭めて打撃戦に持ち込むのか。水と油対決への興味は尽きない。

対抗戦の不安要素は川尻のモチベーション?

 青木対廣田とは対照的に、川尻対横田はストライカー同士の一戦だ。

 過去のキャリアだけを比べると川尻に分があるように思えるが、横田の打撃は変則。他の選手とはタイミングや打つ角度が微妙に違う。そこの部分で川尻が戸惑いを見せれば、試合の流れは横田に傾く可能性が高い。

 ほかにも川尻に不安要素はある。モチベーションの低下だ。当初今大会では王者・青木に川尻が挑戦するDREAMライト級タイトルマッチが計画されていたが、世間の流れに押される形でタイトルマッチは流れてしまい、結局青木も川尻も対抗戦へ駆り出されることになった。この変更に川尻はショックを隠せず、先日行われた対戦カード記者会見でも不満を露にした。好勝負になるかどうかは、決戦当日の川尻の集中力にかかってくる。

“神の子”KIDは本当に「過去の人」になってしまうのか。

 KIDと金原の一騎討ちも興味深い理由がある。

 金原の知名度はKIDより低いことは否定できないが、実力の方は折り紙付きなのだ。今年開催された戦極フェザー級王座決定トーナメントでは、立ってよし寝てよしという今どきの総合格闘技スタイルで勝ち抜き、見事初代王者にも就いている。試合の抱負を訊かれると、金原は「KID選手は過去の人」とバッサリと切り捨てている。

 事実、今年のKIDは2戦2敗と一度も勝っていない。

 大晦日に神の子が見事な復活を果たすのか? それとも過去何度も辛酸を嘗めながら這い上がってきた努力の男が勝利の雄叫びをあげるか? とにかく1ラウンドの両者の出方に注目したい。

 ほかにも三崎和雄vs.メルビン・マヌーフ、高谷裕之vs.小見川道大、アリスター・オーフレイムvs.藤田和之など好カードがズラリと揃うDynamite!!。

 この大会の結果や内容次第で、2010年の格闘技界の勢力図は大きく変わることになるだろう。

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