北京五輪的日報BACK NUMBER
塚田真希の涙。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byTakuya Sugiyama
posted2008/08/16 00:00
「イッポン!」
塚田はうずくまったまま動けなかった。
試合を終えて、塚田は引き上げてきた。記者たちを見るとこう言った。
「お疲れ様です」
試合についてはこう語った。
「中国の選手と全力でやろう、ただそれだけを考えてやってきました。あまり後悔という言葉はないです。全力を出し切りたいと思っていて、出し切れました。だからこの結果は実力です」
大粒の涙をしきりにタオルでぬぐいながら、塚田は敗北を毅然と受け止め、質問になんとか答えようと言葉を絞り出す。
それは、取材陣、周囲のスタッフ、あるいは応援してくれる人々、誰に対しても常に笑顔で誠実に接する塚田らしかった。その人柄と、勝負への潔さ、精進の様が、塚田が誰にも愛されてきたところだった。
手も足も出なかった格上の相手に、必死に対策を考え練習を重ねてきた。それは試合のほとんどの時間、成功していた。
最後の最後だけ、踏ん張れなかった。それが実力の違いということなのかもしれない。
でも。
勝たせてやりたかった。