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ロンドン五輪金メダルの大本命!
欧州王者に輝いた若きスペイン代表。
text by
中嶋亨Toru Nakajima
photograph byMutsu Kawamori
posted2011/06/29 10:30
決勝戦のマン・オブ・ザ・マッチは40メートルFKを決めたチアゴに。この選手権での五輪出場枠は、開催国のイギリスを除くと3枠あり、優勝したスペイン、2位スイス、3位ベラルーシが獲得している
「サイドからの突破力と得点力」を見せたムニアイン。
案の定、スペインは大会が始まると、初戦のイングランド戦で前半にリードを奪い、追加点のチャンスを幾度も手にしながら決め切れず、89分、カウンターから同点弾を決められ、苦しいスタートを切った。スペインメディアは「良い攻撃を仕掛けるも、試合を締めくくる方法を知らなかった」とこの試合を評した。
勝たなければさらに追い込まれるチェコとの第2戦も、序盤は固さが目立った。チェコは前回優勝国ドイツを予選で退けており、チームは堅守を武器にしていた。
それでもスペインは27分にFWアドリアンのゴールで先制。その後も高いボール保持率を維持し、後半立ち上がりに再びアドリアンがゴールを奪い、2-0で勝利した。
この日のスペインは時間が経つにつれて初戦にはなかった連動性を発揮した。
それを可能にしたのはムニアインの先発起用だった。初戦、ミジャ監督は左サイドハーフにジェフレンを起用。「彼のサイドからの突破力と得点力に期待した」というミジャ監督だったが、イングランド戦でのジェフレンは期待に応えようという意識が空回りして孤立。チーム全体のバランスが崩れることにもつながってしまった。
だが、チェコ戦で起用されたムニアインは、相手が飛び込めない間合いでボールをキープ。周囲のサポートにより、ムニアインが自由に動ける余裕が生まれると、その動きに対応しようとしたチェコ守備陣の逆を突くドリブルやパスを織り交ぜ、ペナルティエリア手前に突破口を作った。このムニアインの起用は、その後のスペインの命運を変えることになる。
勝てば五輪出場が決まる準決勝ウクライナ戦で掴んだ決定機。
続くウクライナ戦に、チェコ戦と同じメンバーで臨んだスペインは、リズミカルなプレーでウクライナを圧倒。10分に先制すると、その後も2点を追加して3-0と勝利。勝てば五輪切符獲得決定となる準決勝へ駒を進めた。
準決勝の対戦相手は予選プレーオフでイタリアを退けたベラルーシだった。
試合開始と同時に自陣で守備を固めたベラルーシに対し、慎重にパスを繋ぎ、チャンスを生み出すスペイン。チェコ戦、ウクライナ戦と小気味よくパスをつなぐスタイルで完勝したスペインは、決して攻め急ぐことなく、ベラルーシを揺さぶっていった。
しかし、ゴール前で素早いカバーリングを見せるベラルーシも決定的なミスを犯さず。前半はスコアレスで終わるかに思われた。
ところが38分、ベラルーシはロングスローからペナルティエリア内に放り込んだボールのこぼれを、FWボロンコフがDFを背負った状態で倒れこみながらシュート。CBドミンゲスとFWボロンコフが重なり合った位置はGKデ・ヘアにとってちょうど死角となっており、そこから転がり出たシュートにデ・ヘアは反応できず。ボールはゴールにゆっくりと吸い込まれた。