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メジャーの薬物汚染が
伝記作家を殺す。
text by
海老沢泰久Yasuhisa Ebisawa
photograph byGetty Images
posted2009/05/26 06:00
アメリカでは、昨シーズン、メジャーとマイナーリーグを合わせて70人以上の薬物規定違反者を出しているが、今シーズンも後を絶たないようだ。
2月にはヤンキースのアレックス・ロドリゲスが禁止薬物の使用を認めて謝罪した。
「レンジャース時代の3年間だけ使用した。愚かだった」
ところが、そのあとで、スポーツ・イラストレイテッド誌の記者に、ヤンキース移籍後も使用していた可能性があるばかりか、高校時代にも手を染めていたと暴露された。高校生の時から薬物漬けだったわけで、こんどはコミッショナーも詳しい調査に乗り出すらしい。
スーパースターの偉大な記録は消え去っていくのか。
5月にはドジャースのマニー・ラミレスが禁止薬物の使用で50試合の出場停止処分を受けた。その薬物は、筋肉増強作用のあるステロイドとも、ステロイドの痕跡を消すホルモンの一種ともいわれているが、くわしいことは分からない。
「最近、自分の問題で医師に会った。医師は問題ないと思って薬をくれた。それはステロイドではなかったが、不幸なことに薬物規定に違反するものだった。自分自身の責任だ」
とだけいって、罪に服してしまったからだ。
ほかに、バッターではバリー・ボンズ、サミー・ソーサ、マーク・マグワイヤ、ピッチャーではロジャー・クレメンスなどに疑惑の目が向けられている。いずれも、将来、アメリカ野球の伝説となるべきだった選手たちだ。しかし、彼らの成績や偉大な記録が禁止薬物と無縁ではなかったと分かったいま、伝記作家たちはその部分をどのように書くのだろう。
野球の世界は昔から清廉潔白というわけではなかった。デタラメはいたるところに存在していた。