濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
“絶対女王”辻結花に完勝!
V一が女子格闘技の歴史を変えた日。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph bySusumu Nagao
posted2010/02/28 08:00
試合開始から攻めの姿勢を崩さず、最後は裸絞めでタップを奪ったV一。リングネームは得意技「V1アームロック」から付けられた
試合を見守った女子選手たち、その涙の意味。
“絶対女王”を倒して世代交代をアピールしたVは、号泣しながらチャンピオンベルトを受け取った。その時、会場で試合を見つめていた多くの女子選手も、目に涙を浮かべていたという。ある格闘技関係者は、彼女たちの涙をこう分析している。
「辻が負けた哀しさで泣いた選手もいるでしょうけど、それだけじゃないと思います。Vに先を越された悔しさで感極まった若い選手もいたはず」
この日、誰もが感じたのは、時代が動くことへの深い感慨だった。単にVが勝ち、辻が負けて王座が移動したというだけではない。この試合によって女子格闘技界の常識が崩れ去ったことにこそ、大きな意味があるのではないか。
“辻ほどの選手が負けるわけがない”から“絶対に負けない選手などいない”へ。外野から見れば硬直していたとも言える辻・藤井の二強時代から、誰もが本気で頂点への野心をたぎらせる時代へ。常識が崩れたことによって、女子総合格闘技の動きはさらに活発化するだろう。その第一歩を記したという意味で、Vの勝利は歴史に残り続ける価値がある。