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東洋大の黄金時代が到来か!?
全日本大学野球選手権を総括する。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/06/18 08:00
エース・藤岡貴裕(前列左から2人目)を中心にガッツポーズで優勝を喜ぶ東洋大ナイン
第60回全日本大学野球選手権(以下、大学選手権)で優勝した東洋大学は今、黄金時代を迎えている。過去5年間の東都大学リーグ戦、全国大会の成績を見てみよう。
年・季 | リーグ順位 | 全国大会 |
---|---|---|
2007年 春 秋 |
優勝 | 準々決勝進出 |
優勝 | 優勝 | |
2008年 春 秋 |
優勝 | 優勝 |
優勝 | 優勝 | |
2009年 春 秋 |
優勝 | 準々決勝進出 |
5位 | ― | |
2010年 春 秋 |
優勝 | 優勝 |
2位 | ― | |
2011年 春 | 優勝 | 優勝 |
平成(1989年)に入ってからリーグ3連覇以上は亜細亜大('02年春~'03年春)、青山学院大('05年春~'06年春)、東洋大('07年春~'09年春)の3校のみ。東京六大学リーグでは早大が'02年春~'03年秋まで4連覇、'06年秋~'07年秋まで3連覇をしているが、この7シーズンで全国優勝したのは'07年の大学選手権1回だけ。東洋大の3回優勝とは差がある。
無名の逸材を磨き上げ、プロに送り込む高橋監督は「名監督」である。
また、3連覇以上したチームがそれ以降どうなったかというと、東都大学リーグ優勝は亜細亜大が1回、青山学院大が0回とジリ貧傾向なのにくらべ、東洋大はすでに2回優勝している。代替わりしても成績が落ちないのは、そのつど好選手が輩出しているからである。
'07年……大場翔太(投手/ソフトバンク大・社1巡)
'08年……大野奨太(捕手/日本ハム1位)、上野大樹(投手/ロッテ3位)
'10年……乾真大(投手/日本ハム3位)、林崎遼(遊撃手/西武5位)
'09年以外、ドラフト会議で指名される選手が続いている。さらに大場、大野は一部で注目されていた程度の選手で、まさか4年後、トップ指名でプロ入りするとは本人も予想していなかっただろう。
無名に近い選手を育て上げ、チームも強さを維持する――プロ野球界に目を移せば、西鉄黄金時代を築いた三原脩、万年Bクラスの阪急、近鉄を上位球団に押し上げた西本幸雄が近い存在である。「名監督」の声がどこからも挙がらないのが不思議だが、高橋昭雄・東洋大監督はこの5年間で、間違いなく「名監督」の系譜に名を連ねた。