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東洋大の黄金時代が到来か!?
全日本大学野球選手権を総括する。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/06/18 08:00
エース・藤岡貴裕(前列左から2人目)を中心にガッツポーズで優勝を喜ぶ東洋大ナイン
エラーで気落ちした相手のスキを見逃さず一気呵成に!
東洋大の戦いで今大会、最も注目したのは準々決勝の道都大戦である。
道都大の3年生右腕・佐藤峻一は1回戦、上武大の強力打線を6安打、1失点に抑える好投で注目を集めた。その持ち味は東京ドームのスピードガン表示に「146km」を映し出した快速球、そして横ブレしない縦割れスライダーとフォークボールを使った内角攻めにある。
上武大戦が完投、2回戦の大阪体育大が7回から登板して4回3分の1を投げ、1安打、5三振の好リリーフ。知名度は低いが油断をすれば足もとをすくわれかねない難敵と、高橋監督の目には映ったのかもしれない。
1回表の攻撃を見てアッと思ったのが東洋大各打者の立ち位置。ベース寄りいっぱいに立っているのだ。佐藤はいかにも内角に投げにくそうで、味方エラーのあと、四球、死球を連発し塁を埋めると、5番緒方凌介の左前打で2点を失ってしまう。2回は集中力が切れたのか4本の長短打と四球、捕手の後逸など4失点。ここで勝負はあった。
準決勝の九州共立大戦でも7回の三塁エラーのあとに得点しているように、気落ちした相手のスキを突く攻撃こそ東洋大の真骨頂。他リーグ校とは野球の質が違っていた。
全国へ目を向けて、今大会のベストナインを考えてみると……。
佐藤の名前が出たこともあり、今大会注目した選手をポジション別に、ベストナイン選定の気分で紹介していこう。
まずは捕手から。捕手は肩の強さが評価の基本なので、二塁送球(イニング間の投球練習の最後に行われる二塁送球)2秒未満を記録した選手に注目した。
池沢佑介(東京農大生物産業学部)、君島立将(富士大)、眞砂将広(東北福祉大)、沖野哲也(東京国際大)、岡翔太郎(東洋大)、下川祥太(日本体育大)、梅野隆太郎(福岡大)がその2秒未満選手で、この中では愛知学院戦の6回、二盗を狙った走者を1.98秒のタイムで刺した眞砂が最も実戦向きの肩をしていて魅力があった。
課題はバッティング。大きいバットの引きは確実性を阻害する悪癖の1つでもあるのだが、強打を生む重要な要素でもある。眞砂はまったく引く動きを取らずパチンと合わせるだけの打ち方。「強い打球に対する欲求がもう少し見えないとリストに挙げづらい」とは某スカウトの言葉である。