MLB Column from WestBACK NUMBER
「マツザカフィーバー」の陰で、
この男に期待!
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byYasushi Kikuchi
posted2007/02/23 00:00
いよいよフロリダ、アリゾナの各地で続々チームがキャンプインし始めた。なかでも今年は、レッドソックスの松坂大輔投手がひときわ話題を振りまいている。終始数百人の日米報道陣に囲まれ、早くも“松坂フィーバー”真っ盛りというところだ。
奇しくも渦中の松坂投手と同じ12日に、ロサンゼルスからキャンプ地入りした1人の日本人選手がいた。松坂選手が到着空港で報道陣に揉みくちゃにされる頃、ロッキーズの松井稼頭央選手は自ら運転する車で8時間半かけてツーソンに入っていた。松坂投手とは好対照に、出迎えた報道陣はゼロ。新しもの好きのマスコミ体質は仕方がないところなのだろうが、日本人初のメジャー内野手としてメッツ入りした4年前の喧騒とは一変。あまりにも静かすぎるキャンプ地入りだった。
もちろん野手の集合日(23日)から1週間以上早い現地入りということもあり、報道陣が間に合わなかったという事情もあった。さらに松坂投手だけでなく岩村明憲選手、井川慶投手の新加入選手がすべてフロリダに固まってしまったため、アリゾナをカバーする日本人報道陣が手薄になったことも要因となったはずだ。とはいえ、13日にロッキーズのキャンプ施設で自主トレを開始した松井選手の取材に来ていた報道陣が自分だけだったと知った時は、正直驚き以上に寂しさを感ぜずにはいられなかった。今シーズンの松井選手には、他の日本人選手以上の活躍をしてくれそうな期待感を、個人的に抱いているからだ。
昨年はシーズン途中でロッキーズにトレードされたこともあり、例年以上に松井選手を取材する機会に恵まれた。その間ずっと感じていたのが、松井選手の “進化”だった。このコラムでも取り上げたことがあったが、昨年の彼はオフの時期から、西武時代の同僚だった熊澤とおる氏と個人トレーナー契約を結び、打撃、守備等、野球のすべての基礎をきちんと叩き込む練習を二人三脚で行ってきた。シーズン前半はその途上であったため成績につなげることが出来なかったが、ロッキーズ移籍後は打率3割4分5厘を残し、守備でも24試合に出場しわずか2失策。巧打、堅守を実践していた。シーズン終盤、本人も「これまでやってきたことが間違いじゃなかった」と発言したように、自らの進化に手応えを掴んでいた。そしてシーズン終了後も、ロサンゼルスを拠点に熊澤氏と2人でさらなるトレーニングを続けていた。
キャンプ地入りする前に一度だけ、ロサンゼルスの自主トレを見学させてもらった。練習の密度の濃さにも驚いたが、それ以上に松井選手の好調ぶりが印象的だった。特に今回の自主トレで大きな収穫となったのが、バリー・ボンズ選手との合同練習だった。元々自主トレ場所として同じ市内の大学グラウンドを利用していたのだが、ボンズ選手が声をかけてくれたのを機に、終盤は合同で打撃練習を行ったりしていた。取材に訪れた時も、2人揃って打撃ケージで練習を行っていたが、とにかくボンズ選手が気さくで、終始松井選手にいろいろなアドバイスをしてくれていた。