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マクラーレンがレッドブルを猛追中。
カナダGPを制した、ある奇策とは?
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byHiroshi Kaneko
posted2011/06/16 10:30
「一番」と「頑張れ日本!」という日本語が目立つヘルメットのジェンソン・バトン。昨年の中国GP以来、実に1年以上も遠ざかっていた優勝であった
「だから、言ったじゃないか」とウィトマーシュ。
「本当はもう少し早くドライタイヤに交換させる予定だったが、ジェンソンが『あと2周待ってくれ』と返信してきたので、2周だけ遅らせました。逆転するには、あれがギリギリのタイミングだった」と振り返るのは、マクラーレンでタイヤ担当エンジニアを務める今井弘である。
その後、バトンはマクラーレン陣営が思い描いたシナリオ通りにコース上で次々とオーバーテイク。最後はファイナルラップでベッテルのミスを誘って大逆転優勝を遂げた。レース後、再び降り出した雨の中、集まったメディアを前にウィトマーシュはシャンパンを振る舞いながらこう言った。
「だから、言ったじゃないか。レースは速い者が勝つのではなく、チェッカーフラッグを最初に受けた者が勝者なんだ、と」