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「長野以来、一番気持ち良い滑り」
上村愛子がメダルを超えて得たもの。 

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photograph byTakuya Sugiyama/JMPA

posted2010/02/14 23:30

「長野以来、一番気持ち良い滑り」 上村愛子がメダルを超えて得たもの。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama/JMPA

「五輪の舞台で自分らしく滑る」という究極の目標。

「応援してくれる人たちにメダルを獲ることで『ありがとう』と言いたい気持ちはあったんですけど……4番っていう、メダルが手のなかに入ってこない順位で悲しい気持ちにもなりました」

 微笑みから時折泣き顔がのぞきそうになるぎこちない表情で、気丈にインタビューに応じていた上村。

「五輪の舞台で自分らしく滑るというのがひとつの目標だったので。長野オリンピック以降で、一番集中して気持ちよく滑ることができました」

メダルや数字を超えた感動を見せてくれたK・リチャーズ。

 五輪において3位と4位の差はあまりに大きい。しかし、メダルから遠く離れたところで、こんなドラマもあった。

写真カナダ代表クリスティ・リチャーズの転倒後のエアー。モーグル会場では、ひと際大きな歓声が上がった

 地元カナダのクリスティ・リチャーズである。

 第1エアー後にバランスを崩して転倒した彼女は、外れた右足のスキー板を装着し直すと、その場にしばらくとどまった。5秒、10秒とただ時間が過ぎていくなか、もはやタイムなど関係ないといった風情で、ライトアップされたコースのど真ん中で悠々と構えている。そして……ゆっくりと呼吸を整えた後、再び猛然と滑り始め、今大会で最高と言って良いほどの見事な第2エアーを決めてみせたのである。

 得点は4.36と最下位だったが、彼女の素晴らしいエアーの演技にモーグル会場は騒然となった。彼女は優勝したハナ・カーニーよりもある意味強烈な印象を残した選手となった。勝負に徹し、難易度を抑えた手堅いジャンプでまとめてくる選手が多いなかで、メダルの色や点数に表われない大切な何かを彼女は一瞬ではあるが見せてくれたように思う。

 バンクーバー五輪は始まったばかりである。メダルを手にするしないにかかわらず、記憶に残るシーンを私たちはこの大会でいくつ目にすることができるだろうか。雨続きの天気は悩ましいが、これからの取材が楽しみで仕方がない。

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