ベースボール・ダンディBACK NUMBER
工藤公康の起用法に物申す!
~46歳、不屈の男にもっと敬意を~
text by
田端到Itaru Tabata
photograph byKYODO
posted2009/08/27 12:20
工藤は敗戦処理か左打者へのワンポイント起用のみだが……。
それ以来、私は工藤ウォッチャーとなり、横浜の試合の途中経過を気にしながら、工藤の登板を見逃さないように気をつけてきた。そして横浜ベンチの、この球界の宝に対する扱いがあまりにも非礼ではないかという結論に達した。
工藤の現在の登板機会は2パターンしかない。点差が離れた試合での敗戦処理か、他の投手がピンチを招いた末の左打者へのワンポイント・リリーフ。
それでも起用に一貫性があればいいが、前回は敗戦処理、今回は外野フライさえ許されないような状況でマウンドに上げられ、前進守備の内野を抜けるゴロを打たれてサヨナラ負けでは、気の毒としか言いようがない。勝ちゲームで使うのか、負けゲームで使うのかすら、決まっていないのだ。
今、工藤の登板を告げるアナウンスが流れたときのスタジアムの盛り上がり、どーっと沸き上がる声援の大きさは、それだけで胸が熱くなる。工藤が投げるという、ただそれだけで多くの人の心を動かす力があることを、横浜ベンチはどう受け止めているのだろうか。
ちなみに同じ種類の声援は、中日の試合でも聞くことが出来る。代打・立浪和義が告げられたときだ。しかし、立浪が代打に送られるのは基本的にいい場面だけであり、それがミスター・ドラゴンズに対する落合監督の礼儀なのだと思う。そういえば落合監督は、リリーフに回った工藤に「そんな姿は見たくないぞ」と声をかけたと聞いている。
偉大な投手として引退する時に、引き際をどう飾るのか?
この原稿を書き終えた8月26日の夜、阪神戦で工藤が久しぶりに鬼気迫るピッチングを披露した。2イニングを投げて被安打1、奪三振3。最後の打者・金本知憲に投げ込んだストレートは全球が140kmを超え、最後は146kmのシュートで空振り三振。これでこそ工藤公康だ。
昇った太陽は、いつか必ず沈む。その太陽が沈みゆくときに見せる夕焼けの美しさは、理屈抜きに私たちを感動させる。しかし、夕焼けの赤い空はいつでも拝めるものではなく、いくつかの条件が揃った時にだけ現れる貴重な風景だ。
私は工藤公康という、球界を照らし続けた太陽の夕焼けを見逃したくない。