プレミアリーグの時間BACK NUMBER
来季、リバプールは優勝戦線復帰だ!
“英雄”ダルグリッシュ監督の皮算用。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2011/05/25 10:30
1970年代~1980年代のリバプール全盛期をエースとして、監督として支えたダルグリッシュはまさにチームの生ける伝説。プレミアのトップ4の壁は厚いが、そのキャリアに新たな伝説を加えることが出来るか
2年連続でCL出場圏から漏れたリバプール。
シーズンの成果を測る尺度が、欧州最高峰の大会にして巨大な金脈であるCLへの出場権の有無であるとすれば、リバプールの2010-2011シーズンは「失敗」ということになる。
にもかかわらず、シーズン終了時のチームに悲観的なムードは漂っていない。むしろ、高揚感に包まれているとさえ言えるかもしれない。
何よりも、5月12日に決まったケニー・ダルグリッシュの正監督就任が大きいのだろう。
1月に暫定監督となったダルグリッシュは、1977年からの14年間で、ストライカー、そして後に監督として、リバプールに3度のヨーロピアンカップ(現CL)優勝と8度のリーグ優勝をもたらした英雄だ。
ファンはもちろん、選手からも敬愛されている。
地元出身でキャプテンのスティーブン・ジェラード、同じく生え抜きで副キャプテンのジェイミー・キャラガーなどは、1月の段階で「何としてもケニーの続投を実現してみせる」と全面支援を公言していた。
翌月にアウェイでチェルシーを下した(1-0)際、トンネルの入り口で監督、キャプテン、副キャプテンの3名が笑顔で抱き合う光景は、ロイ・ホジソン前監督はもちろん、2代前のラファエル・ベニテス監督の時代にも目撃した記憶がない。
60歳になる“キング・ケニー”への不安を、好成績で払拭した。
当初は、ダルグリッシュ続投の是非を巡る波乱も危惧された。
選手やサポーターたちは“キング・ケニー”の続投を熱烈に支持していたが、経営陣は、60歳のダルグリッシュよりも若い人物を正監督に迎える意向だったのだ。しかし、1月の時点では降格圏から4ポイント差の12位に低迷していたチームを、5位を争うまでに蘇生させた手腕に経営陣も考えを改め、正監督としての3年契約が実現し、すべてが丸く収まった。
心配された監督としての10年間のブランクも、3-5-2、4-4-2、4-3-3と、対戦相手とチーム事情に応じて柔軟にシステムを選択する采配で、取越し苦労に終わった。
この点では、同時にコーチとして3年間の新契約を結んだスティーブ・クラークの存在も忘れてはならない。クラークは日々の練習も仕切っている。チェルシー時代にジョゼ・モウリーニョの片腕を務めた補佐役は、リバプールでもチーム内評価がすこぶる高い。