プレミアリーグの時間BACK NUMBER
来季、リバプールは優勝戦線復帰だ!
“英雄”ダルグリッシュ監督の皮算用。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2011/05/25 10:30
1970年代~1980年代のリバプール全盛期をエースとして、監督として支えたダルグリッシュはまさにチームの生ける伝説。プレミアのトップ4の壁は厚いが、そのキャリアに新たな伝説を加えることが出来るか
効率的な練習が生む、主力と新加入選手との見事な連係。
ラウル・メイレレスが、「とにかくボールを使ったメニューが多くて、バリエーションも豊富。トレーニングが楽しみになった」と新体制での練習を歓迎すれば、マキシ・ロドリゲスも、「ワンタッチ、ツータッチで素早くボールを捌くプレーを磨くことができる。効果的な練習の成果がピッチ上に反映されている」と言う。
メイレレスとマキシの両翼が中央の攻撃陣と軽快な連係を見せた3月のマンU戦(3-1)が、その成果の一例だろう。
この試合のヒーローは、在籍5年目にしてリバプールで初のハットトリックを決めたディルク・カイトだが、勝利の立役者は1月末に移籍したルイス・スアレスだった。
スアレスは、ドリブル突破、巧妙な浮き球、約20mのFKと、異なる持ち味を生かしてカイトによる3ゴールのきっかけを作り出した。
なかでも、相手選手4名を振り切った末にGKの股間を抜いた先制のラストパスは、アンフィールドの観衆を狂喜させると共に、チェルシーに寝返ったフェルナンド・トーレスを「過去」に葬り去るだけのインパクトを持っていた。
後半には、トーレスと同じ9番を付けるアンディ・キャロルがデビュー。
ピッチに立って最初のタッチがヘディングシュートという、イングランド人CFらしい初登場だった。ダルグリッシュの希望で獲得された両FWは共に20代前半で、まだまだ伸びしろもある。
下部組織出身の若手の台頭に加え、20億円台の予算による補強も。
シーズン終盤には、下部組織上がりの若手も台頭し始めた。2年前にユース組織を一新したベニテスの遺産だ。
4月半ばのアーセナル戦(1-1)でも、彼らの活躍が目を引いた。
最終ラインの両脇では、1軍で2試合目のジョン・フラナガンと、途中出場でデビューを飾ったジャック・ロビンソンの10代SBが落ち着いたプレーを見せた。
中盤では、3月からジェラードの戦線離脱で先発出場が増えたジェイ・スピアリングが、アーセナルのホープ、ジャック・ウィルシャーのお株を奪う活躍を見せた。
もちろん、補強による戦力アップは必要だが、この点でもフットボール・ディレクターのダミアン・コモリが、少なくとも20億円台の予算を認める発言をしている。昨夏までは、前オーナーの資金難による補強不足に落胆の色を隠せなかった主力選手たちも、経営陣の“パフォーマンス”に期待を寄せるようになった。ペペ・レイナがその代表格だ。
マンUやアーセナルへの移籍の噂が絶えなかった守護神は、「トッテナム戦後に経営者と話をしたよ。オーナーは本気だ。リバプールの一員であり続けたい」と残留の意思を表明した。