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ゼネラル・マネージャーを探る。 

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菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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photograph byGettyimages/AFLO

posted2005/12/27 00:00

ゼネラル・マネージャーを探る。<Number Web> photograph by Gettyimages/AFLO

 このコラムの発端はおよそ1ヶ月前に遡る。

 「GMってどんな人がなっているんですかねぇ。みんな大卒なんでしょうか…」

 シーズンを終え、帰国前にLAで余暇を過ごしていた木田優夫投手とお茶をしていた時のことだった。確か当時行われていたGMミーティングの話に及んだ際、木田投手が発したこの一言がずっと記憶の片隅に残っていた。これまで何人ものGMたちを取材してきていながら、その経歴まで意識したことは一度もなかったので、自分にとって新鮮な響きがあった。

 まだ日本ではGMという存在が一般化していないが、メジャーではGMが果たす役割は非常に大きい。例えば今季88年ぶりにワールドシリーズを制したホワイトソックスのメディア・ガイドに掲載されているケン・ウィリアムスGMの説明を引用すると、

 『このポジションにおいてウィリアムスは、メジャー、マイナーリーグの人材およびスカウトを含めた野球運営の決定すべての責任を負っている』

 と、ある。つまりGMとはフロント経営陣からすべての運営を託された現場の総責任者ということだ。現にウィリアムス氏も2000年にGM就任以来、数々の選手補強を断行し、それまでの打撃主体から強力な投手力を誇る堅実な守りのチームへと変貌させ、遂に悲願の優勝を勝ち取った。その考え方一つでチーム全体の特色も変わってしまうほど、GMの影響力は絶大なのだ。チームの経営陣にとって、GM人事こそが最も重要な課題だといっても過言ではないだろう。

 では木田投手が抱いた疑問ではないが、一体どんな人物がGMになっているのだろうか。そこでメジャー全30チームの2005年版メディア・ガイドをチェックし、全GMの経歴を調べてみた。

 まず30チーム中GMを採用しているのが29チーム。唯一オリオールズだけがGMという役職が存在しないのだが、実質上GMと同じ職務をこなすだろう「野球運営担当上席副社長」が存在するので、結局は全球団に現場を取り仕切る総責任者がいるわけだ。そしてこれら30人のGM(オリオールズの場合もGMと考える)において、約2/3の19人がプロ野球すら経験していない人たちだった。日本でも時折GM職を採用することがあり、何となく監督経験者が就任するのが一般的になっているが、メジャーではGMは専門職と考えられており、決して選手や監督経験者にとらわれていないというのが、ここからも明らかになってくる。

 だが学歴に関してはちょっとうるさいのか、29人のGMが最低でも大学を卒業している。一度高校からドラフトでプロを経験した後、引退して大学に入った人たちもいるくらいだ。だからといって専攻は体育学、経済学、心理学、ビジネス──といった具合に完全にバラバラで、大学で学んできた内容が重要ではなさそうだ。

 またプロ未経験からGMになった人たちの傾向として目につくのが、大学や高校でコーチを経験した後スカウトとしてメジャーチームに採用され、そこからフロントに転身するという、いわゆる“現場の叩き上げ”出身者が多いことだ。当たり前のことだが、それだけ経験が重要視されていることの裏付けだろう。最近ヤンキースのキャッシュマン氏を皮切りに、レッドソックスのエプスタイン氏、ドジャースのデポデスタ氏(後者の2人は今季限りでチームを去った)など、 20代後半から30代前半の若手GMが次々に登場したが、彼らとて短いながらも現場を経験した上で抜擢されている。

 さらにパドレスのタワー氏のように、現役時代から同一チームだけに所属し続ける希有な例もあるが、ほとんどのGMたちが数チームを渡り歩いてきている。それだけGMに適した人材を発掘するのは難しいのだろうし、いろいろなチーム事情を理解している人物の方がトレード等の交渉能力が長けているということもあるだろう。まさにGMも監督、コーチ、選手と同様な技術を売って生計を立てるスペシャリストなのだ。

 日本でも、このようなスペシャリストをどんどん育成してみてはどうだろうか?今季ロッテがこれだけの躍進を遂げた理由の1つは、バレンタイン監督に外国人選手の獲得を含めたGM的な権限を与えたため、同監督の下現場が1つにまとまったからだと考えている。いくら名監督といわれる人たちをチームに招き入れても、選手獲得など渉外部門をフロントが握っていては監督が力を発揮できるチーム編成などできないだろう。GMを頂点に、現場を一本化するのはきちんとした方向性もでてくるし、決して悪いことではないと思うのだが…。改革が叫ばれる日本球界にあって、フロントのあり方についても検討してみる価値があるのではないだろうか。

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