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横浜・筒香はニュータイプ?
理論を超えた本塁打王を目指す! 

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2010/01/19 10:30

横浜・筒香はニュータイプ?理論を超えた本塁打王を目指す!<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

 左打者に好打者が目立つ時代になった。

 イチロー(マリナーズ)をはじめ、多くの左打者が球界を代表する好打者として数えあげられている。

 昨年2連覇したWBCでもスタメンの半数が左打者だった。川崎宗則(ソフトバンク)、青木宣親(ヤクルト)、岩村明憲(パイレーツ)、福留孝介(カブス)ら……日本には左に好打者が多いのだ。

 しかし、こうやって左の好打者を列挙してみると、妙な偏りがあることに気がついた。

 左打ちの中の「右投左打」には、なぜかホームランバッターが少ないのだ。

 右投左打のホームランバッターといえば、松井秀喜(エンジェルス)や金本知憲(阪神)など大打者もいることはいるのだが、数でいうとイチローなどアベレージ・ヒッターが多いように思われる。「右投右打」や「左投左打」の選手には様々なタイプの打者がまんべんなくいるというのに、だ。

 理由はあるのだろうか?

通算本塁打数ランキングの上位にほとんどいない右投左打。

 実際、歴代の日本人のホームランバッターを振り返っても、その傾向は顕著である。右投左打でホームラン王に輝いたのはセ・リーグでは松井秀喜と掛布雅之(元・阪神)ら少数で、パ・リーグでは小笠原道大(当時・日ハム、現・巨人)しかいないということが分かった。

 プロ野球の通算本塁打数の10傑では、1位は左投左打の王貞治、2位が右投右打の野村克也、3位左投左打の門田博光と続き、以下、山本浩二(右投右打)、清原和博(右投右打)、落合博満(右投右打)、張本勲(左投左打)、衣笠祥雄(右投右打)……と、10位以内には右投左打がひとりもいない。20位まで見ても、実は右投左打はふたりしかいないのだ。

 最近、アマチュア選手を取材していて右投左打の指導の難しさをよく耳にするようになってきた。イチローの活躍や出塁率を最重要視する勝利至上主義の影響なのか、やたらと左打者が増えているという現状がその背景にはある。右投右打の選手でも右投左打に修正することが増えているらしい。

 そんな流れの中で、右投左打が多い風潮そのものを否定的に見る人も増え始めている。実際現場に行くと、「右投左打は育てるのが難しい」と指導者たちは口を揃えて言っている。

【次ページ】 「右投げ・左打ちは体の自然な動きに逆らっている」

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